ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■サイレンナイト
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真夜中、消防車がウチの前をガンガン走って行った。

通っていく台数が多いのか、切羽詰まっているのか、あまりにも騒がしいので思わず窓を開けてしまったらちょうどお向かいさんもガラッと顔を出したところであった。どもども…。

消防車は駅前商店街の方へ走って行った。その辺り、わりと火事多いんである。

「すごいねえ…」

嫁もなんだなんだと覗いていた。窓を閉めてからも後続部隊(?)の消防車がガンガン通るし、何を言っているのかまでは聞き取れないが、おっさんのガミガミしたアナウンスも流れてくる。よほど大きな火事なのだろうか。

「これじゃ起きちゃうな…」

子供達の寝顔を覗いてみると、息子・タク(4才)は全く動じずガーガー寝ていたが、娘・R(6才)は半ベソな顔でこちらを見ていた。目がウルウルしている。子供にとってサイレンって不気味に聞こえるんだろうなあ。ましてや真夜中だと特に。

「怖くなっちゃったかい?でも大丈夫だよ」

そう言って添い寝してやると、こくりと頷いて僕にしがみついてきた。なんて可愛いのだ!実はちょっと怖くなってるのは僕なのだが。なんか近そうだし。

昔、朝消防車のサイレンで目が覚めたことがあった。でも眠くてそのまま寝ていたら実は道路を挟んだ斜め向かいの家が絶賛全焼中、なんてことがあり、ちょっとトラウマ的な怖さがひしひしと迫る。

それに火事とケンカは江戸の華。ま、練馬は江戸じゃないけど…。あと僕の名前、火事りんだし…。そういうトラウマ半分、ヤジウマ半分で

「ちょっと見てこようかなあ…」

と外に出ようとすると

「ダメ。行かないで」

さっきまでぐずっていたRが僕の腕にしがみつく。

「え。ダメ?」

「そばにいて。お願い」

なんか鼻血が出そうになった。こんなマンガかドラマみたいなベタな引き留め方をされるなんて…。ここで

「お嬢さん、男はそれでも行かなきゃならない時があるんでさぁ…」

とか言ってしがみつく娘を振り切るのはバカである。

「分かったよ。一緒に寝ようね…」

Rを抱いて寝かせつつ、ちょいと携帯に手を伸ばしてツイッターで調べたところ、もう火は消えたようだ、という近所っぽい人の書き込みがあったので安心した。こういう情報がすぐ引っ掛かってくるって、ネットも便利になったものである。

すぐ鎮火した火事とかけまして、Rを寝かせる僕とときます。

その心は、ボヤはよい子だ、ねんねしなー。

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05月26日(水)
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