ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■メイド喫茶ノスタルジア
※今日の日記は、去年12月24日の除夜のテキスト祭に1時間だけ発表されたものです。


アキバのメイド喫茶でひとりビールを流し込む僕は一体何者なのだろう、と我に返った。

かつてここにRちゃんという超美少女がメイドとして働いていた。古い付き合いで、17才でロリ顔巨乳の彼女は僕の好みにどっぷりはまった女の子であった。僕は妻がある身なので、無論おちょめちょめしたとかそういうことはない。正直したかったが、悶々と想いを秘め友達以上変人未満の関係を続けていた。

ある日からこのメイド喫茶で働くことになったと聞き、僕も何度か訪れたものである。

ゾイドもしくはメギドメイド喫茶のメイドというのは、どちらかというとメイドというより「ゾイド」または「メギド」等の単語の方が語感としてしっくりくる方々が多いが、Rちゃんのメイド姿は「掃き溜めに鶴」を地で行く、群を抜く可愛さだった。

ただこの至福のひと時も長くは続かなかった。Rちゃんが帰るところを待ち伏せしたりするストーカーが現れ、身の危険を感じてメイド喫茶を辞めざるを得なかったのである。それからしばらく疎遠になった時期があり、久しぶりに会った時には彼女は別のところで働き、僕には子供が生まれていたりと、お互い環境変化があったので近況を語り合った。

「あのね、僕の子供、女の子だから君の名前を付けたよ」

「ええっ。何それ」

「僕は娘を君と同じ名前にした」

「ええーまじでー。それってどうなのよ?奥さんはいいって言ったの?」

「ダメとは言わなかった」

「それっていいのかな…人として…親として…」

ひとりの少女を身悶えさせてしまったが、僕はこれでいいのだ、僕はパパになったのだからパパなのだ、とRちゃんの巨乳に負けぬよう胸を張った。

ただしそれ以降Rちゃんとは連絡が取れなくなった。

メールしても戻ってくるし、携帯も変わってしまったようで、何度電話してもダミ声のオヤジが出る。僕のしたことがキモ過ぎたのだろうか。彼女からすれば僕もストーカーと変わりないということだろうか。Rちゃんを失った心の穴はなかなか埋まってくれなかった。

あれから3年。僕は再びRちゃんがいたメイド喫茶に足を運んだ。Rちゃんはいないが、もう一度当時の雰囲気を味わいたかった。それにもしRちゃんとまだ繋がりがある同僚メイドがいれば近況を聞けるかもしれない、というこれまたストーカー的な発想で入店したのである。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

ああこの子だ。メイド喫茶の常套句で迎えてくれたこの子こそ、Rちゃんがいた時期に一緒に働いていた子。ここでは仮に「アキバ子ちゃん」としておく。この子に聞くことに決めた。

サンビスただこれが難しい。メイド喫茶はキャバクラなどではなく、女の子がメイドのコスプレをしただけの普通の喫茶店である。女の子が横に座ってサンビスしてくれる訳ではない。別料金を払ってゲームをするとかそういうサンビスを設定している店もあるが、この店にはない。会話をするタイミングは注文する時と会計する時ぐらいである。客も主にその瞬間を狙って束の間のコミュニケーションを楽しむのだ。

それに接客してくれるのがアキバ子ちゃんであるとは限らない。他に谷亮子風メイドなどもいる。しかしRちゃんを知っているという確証が持てるのはアキバ子ちゃんしかいない。とにかくアキバ子ちゃんが応対してくれるのを祈るしかなかった。

「ご注文はお決まりでしょうか」


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04月07日(土)
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