ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■狐の嫁入り、嫁の狸寝入り。
嫁の機嫌が悪かった。
寝る時も「おやすみ」の一言も言わずに
ふすまをすーっと閉めて寝てしまった。

おそらく、僕が夜遅くまでネットをやっているからだと思う。
おそらく、僕が家事をやらないせいだと思う。
おそらく、僕が風呂に入らないからだと思う。
おそらく、僕の足が臭いからだと思う。

おそらく…あああああああ。

このまま放置しておくと、
かなり重い家庭内摩擦になりそうだったので
とりあえず僕も寝ることにした。

嫁は壁のほうを向いて寝ていた。
明らかに拗ねている。

ちょっとご機嫌を伺おうと、ぽふっ、と、肩を叩いてみた。
反応がない。もう眠りについているのだろうか。
しばし沈黙。
やがてその静けさを破る

「ごきゅり」

という音がした。嫁の唾を飲む音である。

へっへっへ。起きてる。絶対。

僕はそう確信し、奥の手を使うことにした。
嫁の顔を強引にこちらに向かせて、

ぶちゅー。

これでどうだっ。

…それでも嫁は黙ったままだった。何の反応もなし。

こうなったら本気の本当の奥の手を出すぞ!と思ってパンツを脱ごうとしたが…
やめた。

いじけるのもいい加減にするがよい。こっちが
いじやける(※)だけだ。

僕は諦めて横になった。僕も眠りにつこう。
そう思った矢先、嫁の手がすーっと伸びてきて
僕の手をつかんだ。

ほらみろ、起きていたじゃないか!

嫁がごそっと動き出した。そして

「ゴメンネ…」

と、一言だけ呟いた。

「何が?」

僕は聞き返したが、嫁は何も言おうとはしなかった。

何なんだ!何がごめんなんだ!

僕は混乱しつつも日ごろの寝不足がたたって
いつの間にか眠りに落ちていた。

その意味は今でも分からない…。
ていうか、怖くて聞けない。

※いじやける…栃木弁で「むかつく」の意。

03月09日(日)
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