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やさぐれ日記・跡地
by アルティーナ
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■オイテイカナイデ・2
要は隣に携帯の持ち主本人がいるのだろうが、私に電話をしたのはY君だった。

店内での通話だから、なるべく声を小さくする。
そうなると何処か自分の声は素っ気なく響いてしまうのだが。




「今、どこ?」

「喫茶店」


「誰と?」

「・・・1人だけど」


「ふーん」

「・・・何?」



少し冷たいかと思ったけれど、店内で長話をするのは気が引けたし、何より着信前の酷い思考と精神状態だったこと思えば──────




「あ。本、返そうと思って」

「あぁ・・・」


「俺とI君と一緒に、後で持ってっていい?」

「ウチに?」


「うん」

「・・・いや、今、I君ちに居るんだよね?
私が行くから」


「来るの?」

「そっちのがいい」




今まで男女問わず「ようこそ、ようこそ」と友人を招いて来た。
料理の腕を幾度となく振るったし、友人たちと過ごす時間がとても楽しかったから。

けれど正直、当分誰かを招く気にはなれなかった。

考えてみればおかしな話である。
独りになる前は好き勝手していたのに、フツーは逆だろう。




「何時頃?」

「んっと・・・1時間後」


「喫茶店出る時にメール頂戴、だって」

「わかった」






電話を切ってから紅茶とケーキを食べ終えるまで、私はつくづく自分の馬鹿さ加減を後悔した。

Y君はともかく、I君は学校の友人の中でも特に親しい。
しかし生憎と言うか、彼は私にとって「相談したい人」ではないのだった。


更に付け加えれば、むしろ私が常に「相談される人」になっている。

今の自分には誰かの相談なんて受ける余裕なんてない。
全く、ない。
そんなものどーでも良いから、「テメェはテメェで勝手にやれ」と言って突き放してしまいたいくらいに。



それでも私は「いつものように」振る舞おうとして、最近どうなんだ、だの、その後どうなったんだ、だの甲斐甲斐しく彼の身の上を聞いてしまうに違いない。



彼が例えば「相談したい」と思える相手だったら、こんなに後悔していない。
けれど相談したところで「俺もさ〜」と自分のコトを持ち出されるのは嫌だったし、だからと言って傷を舐め合うのも御免だった。

・・・いや、彼が悪いワケではない。


ただ、厄介な私には相談相手と呼べる人もなかなか居ないだけの話なのだ。






そうこうして無理を重ねるから、生じた歪みはいつまでたっても元に戻らないのだろう。

一体何やってるんだ、私。






(・・・もう少し落ち着いたら、必ずまた来よう)


そう思って喫茶店を出たところでI君に「これから向かいます」とだけメールし、スクランブル交差点を憂鬱な気分で渡った。

真っ直ぐ真っ直ぐ20分ほど歩くうちに、足取りはどんどん重くなっていく。


ここで私が弱さも脆さも100%全開の状態で2人と対峙したら、彼らはさぞ驚くことだろう。
そうして慌てふためいて気を遣わせて気まずい雰囲気になるのだろう。

容易に想像できたから、だから行くなら「いつもの」私じゃなくちゃならない。





(キャンセルして別の日にすれば良かった)



それを思うには遅すぎて、実行するにもまた遅すぎた。

信号をいくつか渡ったところで左折すれば間もなくI君の家が見える。
散歩する老人のようにフラフラゆっくり歩きながら、この期に及んで躊躇していたが、いよいよインターホンを押すところになって覚悟を決めた。







ピンポン、と軽快な音が聞こえてから10秒ほど。
鍵が開いて扉を開けるとI君が申し訳なさそうに出迎えてくれた。


「どうもどうもすみません、わざわざ来て頂いて」

「いーえー、急にお邪魔しちゃってごめんなさいね」




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07月06日(火)
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