ID:7590
Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review @ Tokyo
by Niseko-Rossy Pi-Pikoe
[851263hit]
■エクスドット主催ジャチント・シェルシ「山羊座の歌」@杉並公会堂レビュー
東中野の駅のホームから東中野ポレポレの「劇場版・神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」の垂れ幕を見上げて、荻窪の杉並公会堂に着くのは7時すこしまわるかなと電車を待っていた。
コンサートが終わって10時までやっている吉祥寺のカフェズミへアイスコーヒーを一杯すべり込むとトヨツキ将軍がビールをのんでいた。どんなコンサートなの?ときかれて。
首からドラを下げたばあさんがドラを打ち鳴らしながら、ごぇー、ふー、んぎゃー、と、うたいながら登場してくるんですよ、もう、フォーク・ミュージックの源泉を放っているんですよ、声楽のテクニックが仕込まれているところも理解できるんだけど、年寄りの押し切りでエッジが立つというより伝統芸能のセンかなあ・・・
現代音楽の愛好家からは怒られてしまうような感想だよなあと思いながら話すと、それは面白い、たださんは微分音に耳が行っちゃうよね、あれはフォークですよー、義太夫の、お経のカセットがあって、コルトレーンが、黒海周辺の、と、話題が連鎖拡散して盛り上がってゆく。
作曲家・川島素晴と山根明季子が主宰するシリーズ「eX.(エクスドット)」の17回は、「ジャチント・シェルシ《山羊座の歌》完全版日本初演〜平山美智子を迎えて」で、満員札止めの盛況で開催された。川島さんのツイッターからは予約をいただきましたが断腸の思いでお断りしております、キャンセル、遅れのご連絡はお早めに、と、発信されている。会場に着いて予約者氏名を名乗っていると、うしろにはキャンセル待ちの人だかり。おめかしをしたおばあちゃんたちがたくさん旧交をあたためている。
会場が真っ暗になって。
宮崎駿のアニメ映画『ハウルの動く城』のソフィばあさんが、首からドラを下げて出てきたように見つめたのだし、イタリア未来派の末裔(なのか?ホントに)、不思議な作曲家ジャチント・シェルシとのコラボレーションは、他の歌手では再演不可能とされる、そこに、彼らだけのロマンチックな物語を相対化させるのも可能だけど、そもそも・・・。再演?ふと思うのだ、そもそも音楽は再演されたことなぞなかったことではないのか。
コントラバス奏者、ダブルリードのアルトサックス奏者、ふたりの打楽器奏者、ライブエレクトロニクス奏者、とのデュオ形式のパートも織り込まれている全20曲。1時間半ちかくに及ぶ休憩なしの公演は、またたく間に過ぎた。若い共演者たちもじつに鍛錬された申し分のない出来。ソフィばあさんが、あら、曲の順番を間違えたわ、あなた、ごめんなさいね、と、ステージを歩んで、音楽は放たれてゆく。
山羊座とはシェルシの星座であるだけでなく、生命が地上に生まれた「占星術の山羊座ゾーン」ではないかと川島さんは書いている。地球・人類の誕生と滅亡といった壮大なドラマのイメージ。この音楽が創造されたときに、シェルシと平山が届いていた場所はまさにそういうヴィジョンだったか。
平山によれば、最晩年の3年間のシェルシはお金になる仕事にしか興味を示さず、毎日バレエ学校の女性を多数はべらせ、作曲行為への情熱も薄らいでしまったのだ、と。なかば喧嘩別れ的に疎遠になってゆき協働作業は完遂させられなかったとも。しぇるしー、1905年から1988年、80にもなってそんなことをしていたのかー、わかる、わかりすぎるくらいにわかる。そして、それで山羊座の歌の価値が損なわれることも一切ない。
[5]続きを読む
06月03日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る