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Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review @ Tokyo
by Niseko-Rossy Pi-Pikoe
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ポール・モチアン・トリオ2000が2年連続してリリースした『Paul Motian Trio 2000+One / On Broadway Vol. 4 or the paradox of continuity』Winter&Winter 2006、『Paul Motian Trio2000 +2 / Live at Village Vanguard, Vol.1』Winter&Winter 2007を最初の2枚に。

ポール・モチアン(ドラム1931〜)、ラリー・グレナディア(ベース1966〜)、クリス・ポッター(サックス1960〜)。
ビル・エバンス+スコット・ラファロとの伝説的なピアノ・トリオから、ポール・ブレイとのトリオ、キース・ジャレットのアメリカン・カルテットを経て、80年代になると若きジョーロ・ヴァーノとビル・フリーゼルを抜擢したトリオ(彼らはニューヨーク・ジャズ・シーンの演奏モードを変えたとさえ言われている)を始動させ、さらに菊地雅章とゲイリー・ピーコックとのトリオ“テザート・ムーン”、自己のエレクトリック・ビバップ・バンド(ここでの若手登用の炯眼もすさまじい)、と、今年77歳になるとは信じがたいジャズ界のマイスターぶりを示すポール・モチアン、その彼が99年に第1作を出していたのがこのトリオ2000で、グレナディアはすでにブラッド・メルドー、パット・メセニーとの重要な仕事を成していたにせよ、サックスのクリス・ポッターについては、よくもここまで化けたか、と、思わせる、泣く子も黙る出来。

前者、トリオ2000+One、は、このトリオにレベッカ・マーティン(ヴォーカル グレナディアの奥さん)、菊地雅章(ピアノ)のどちらかが加わったトラックにより構成された作品。選りすぐりのスタジオテイク集であり、奇跡的なものさえ感じる演奏ばかりだ。1曲目、どうしてこう何気なく吹き始めたようにしてポッターは、痺れるようにスローな、まるで寝起きのカップルの愛撫のようにたどたどしくも語ってゆくのか、演奏する4人とも「あ、これは訪れているな・・・」と感じたに違いなく、2分30秒に菊地が絶妙に受けて続ける、しばし、3分12秒のところで菊地が手放したソロのあとのポッターの受け、この受け、そして菊地とポッターの併走の夢のような時間。4・5曲目は「Never Let Me Go」を菊地からインするか、ポッターからインするかの違いで、続けて収録されて1曲にも聴こえ、どうしてそんなに物怖じせず自由なのか?ポッター、ここでの4者の演奏が一番すごいかもしれない。11曲目の「I Loves You Porgy (8:07)」は、頼むよプーさん、どんだけえー、というくらいの沈み込みと痙攣美に冒頭から。この曲、どうしたって、ジャレットが闘病後にパーソナルな愛情を綴ったグラミー賞『The Melody At Night, With You』を連想せずには聴けないだろう、彼らもまたよもやとも思う菊地の世界、菊地渾身の突き詰めた現前、世界に放つ唸り、しかしそれだけでは奇跡に一歩足りない、そこで、だ、3分42秒に入ってくる、だらけてはいるけど大きいんだおいらのちんちんはだから大きくしておくれぼくのハニー、と、まさに言わんとするポッターの登場が驚きなのだ。これは大物だ。いやー、それを受けてのこの4者のまとめかた、祝祭が入る、ミーハーだけど、おれはこのトラックを一番に買う。レベッカ・マーティンのトラックに触れないですまない、彼女の他作品は知らぬが、ここでのヴォーカルは見事にカサンドラ・ウイルソンを外強襲ハナ差まで詰め寄るもので、彼女のトラックとの相乗効果も、この盤をチーズとトマトが挟まったハンバーガーのように支えている。プーとだけのトラックで埋めなかったモチアンの創造に対するバランス感覚と読む。


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01月23日(水)
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