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Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review @ Tokyo
by Niseko-Rossy Pi-Pikoe
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■夢とタケミツ
井上道義のベートーベン第九はどこか弾んでしまう明るさで。これは井上さんの天性だから納得してオッケーでいいや、日本海側なのにイタリアのように明るいのね。それよりもなんか明らかに空気の読めない石川県知事(ここでマエストロに上から目線で話すか、フツー?)の祝辞とか、それがなかったらいいのに。普段クラシックのコンサートに縁のないおっさんおばはんが大挙して参じていたのであろう、アナウンスも不充分だったせいもあって、演奏中ケータイの着信音、時報アラーム、「You Gatta Mail!」が鳴りまくっている。石川県きっての文化都市金沢でこれかよ!さすがに、第4楽章のクライマックス、第9の843小節が始まった直後で、携帯着信音が鳴ったときには、井上さん、腰に左手を当て、半身で客席を振り向き、「ちくしょう」という口の動きを見せていた。録画も入っていたコンサートなのに、とんだ第九となったものだ。でも、その井上さん61さいの男気がカッコイイと思ったのはぼくだけでしょうか。

やんややんやの終演さわぎを一足先に出たぼくたちでしたが。駐車場に向かうときにクレーメルと連れの美人女性が会場から逃げ去るように道路を横断してきたのだった。クレーメル61さい。カッコイイ。ぼくたちとすれ違った(ほんの1メートル!)一瞬、静寂と追憶シーンが交差する。

あれは85年だったか。ECMファンクラブのシアクくんがアイヒャーに会って出来立ての『アルヴォ・ペルト:タブラ・ラサ』をもらって帰国、西荻窪の彼のアパートで「ニューシリーズだって?どんな音楽なの?」と4〜5にんで正座聴きしたあの衝撃。間違いなく日本に入国した最初の『タブラ・ラサ』ECMドイツ原盤だった。誰が最初にこの音楽を歴史的に素晴らしいとメディアに投ずるか、さすが吉田秀和だった。おれが音楽評論家だったらおれだった。

あのヴァイオリンのクレーメルと交差した。人生なぞ一瞬である。

02月21日(日)
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