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Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review @ Tokyo
by Niseko-Rossy Pi-Pikoe
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■お昼、晴天に花火の音が響く
藤原清登って、レコード会社の低音王だろう?スイングジャーナルだろう?即興演奏できるのだろうか、としか認識していなかったベース奏者。それがなぜに、日本のフリージャズを超えた神レベルの演奏家、坂田明と。さらに、来日するとは思わなかった伝説のアンドレア・チェンタッツォと。ヨーロッパの音楽祭で、チェンタッツォの共演者が家族の事故で演奏できなくなった時に、偶然この3人で即興演奏をしたのがきっかけだったという。そうだよなあ、フツー、この3人は出会わない、共演しないと思う。それぞれ違う生態系にいるように思う。ステージは、チェンタッツォのソロから始まった。オリジナルな打楽器と配列、ローテクなデジタル機器、老いても流石である。イタリアの、ヨーロッパの前衛知性の文化の土壌を芳しいまでに感じさせる打音だ。こういうのは学習や鍛錬では届かないものかもしれない。次に、坂田、藤原、チェンタッツォのトリオ。ひとしきりトリオ演奏を交感しながら、唸る坂田の独壇場へと。読経や練行衆の読誦や琵琶法師と地続きな、唸りの顕現。横綱相撲に圧倒される。熱を帯びて乱打する藤原のベースの奮闘具合も、このトリオでは動かし難いバランスに貢献している。チェンタッツォのクールな老境然とした突き放しも、絶品である。まったく不思議なトリオだ。わたしもジャズや即興のリスナーとして、誰と誰が共演するのかがモンダイだ、共演すればいいというものではないと本音辛口を言うけれども、このトリオは想定外の良さだった。音楽って、わからないものだし、知らず型にはまっていた自分の耳にも反省。

3つのステージを観終えたとき、ふと、伊藤キム、センヤワ、坂田明の声の多彩が一本のテーマとして浮上していたのに気付いた。翌日のトリは友川カズキだという。言わずもがな、な、声と歌だ。「生きているって言ってみろ」の絶叫が締めなら、出来すぎ君である(実際、そうだったという)。

声を主軸にしたクロスジャンルなイベントというのはいいかもしれない。最近感動していた田中悠美子とかイアン・ボストリッジとかも。

(多田雅範)

09月14日(日)
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