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Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review @ Tokyo
by Niseko-Rossy Pi-Pikoe
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■エリソ・ヴィルサラーゼ@すみだトリフォニー
 演奏会後半は、先達ヨゼフ・ハイドン(1732〜1809)の「アンダンテと変奏曲 ヘ短調 Hob.XVII:6」から。哀切なヘ短調と愛らしいヘ長調の2つの主題をもつ二重変奏曲で、長大なコーダにいたって、ハイドンの変奏技巧の高みが感動的に歌われる。1793年の作曲で、良き理解者だった貴族マリアンネ・フォン・ゲンツィンガー夫人をその死で失ったことが、同年に書かれたこの曲の深い感情表現に繋がっていると言われるいっぽう、モーツァルトの愛弟子だったバルバラ・フォン・プロイアーの思い出に捧げたとみる説もある。
 ドイツ・ロマン主義音楽の象徴的な存在、ロベルト・シューマン(1810〜56)が遺したピアノ独奏曲の多くは、彼の悩み多き20代に集中して書かれている。若きシューマンはパガニーニに魅せられ、ヴィルトゥオージティへの熱狂を抱いたが、超絶技巧が抱くデモーニッシュな求心力とダイナミックな運動性に、彼はロマンティックな夢をみていたに違いない。超絶技巧の名人芸と内密な詩想の対立は、ピアノの演奏から、批評家そして作曲家へと道をつける方向に帰結した。「交響的練習曲 作品13」は、1834年から35年にかけて作曲された大作で、シューマンの独創性が圧倒的なスケールで結実をみせている。1837年ウィーンでの初版では、主題(嬰ハ短調)と12の変奏曲の形式をとり、輝かしいフィナーレでは新しい主題を変奏主題に織りなして、壮麗なクライマックスをかたちづくる。「変奏形式による練習曲」の表題を付した52年の改訂再版では、初版から「第3番」と「第9番」が除かれている。ブラームス監修による1873年旧全集の補巻にはシューマンが発表をしなかった5つの練習曲も遺作として追加されたが、ヴィルサラーゼはこの追補を頑として採らず、今回もおそらく初版の楽曲構成にもとづく演奏を行う。

02月03日(月)
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