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Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review @ Tokyo
by Niseko-Rossy Pi-Pikoe
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■夢とタケミツ
はじまりは今年3月25日のサントリーホールだった。長女のはたちの誕生日を祝おうとデートの約束をしていたのにドタキャンされ!カレシに負けたか・・・思いっきりブルーな気分で「そんなら地方のアンサンブルでも聴いて過ごそ・・・」などと、手ぶらで出かけたところで、オーケストラアンサンブル金沢の世界レベルの響きに度肝を抜かれ(2階ナナメのC席とかでだよ)、スキンヘッドの長身指揮者井上道義のイタリアの空のような天才に出会ったのだった。天野誠さんが制作した輪島うるし塗りのお箸もおみやげにいただいたのであった。いつか金沢の地へこのアンサンブルを聴きに出かける予感はしてた。そしていただいたお箸を長女への誕生日プレゼントへと転用したおいらだった(はたちの誕生日にそれだけでいいのか!音楽ジャンキーのおやじだからそれでいいのだ)。

クレーメルと井上道義とクレメラータ・バルティカとオーケストラアンサンブル金沢が全国ツアーしているらしい。そして、9月15日のアンサンブル金沢『設立20周年 県内縦断ありがとうコンサート 金沢公演』に、クレーメルが急遽参加するという情報をウェブで見つけたのがつい2週間前だった。ニュースではグルジア情勢ロシアの軍事介入が報じられていた矢先で、クレーメルがカンチェリの「V&V」を演るというのである。アンサンブル金沢は、岩城宏之の「みんな第九を年末にやるのはおかしい、ほんとにおめでたい時だけ演るべきではないのか」というポリシーに則り、今回は第九を演るのである。9月の第九、と、カンチェリ。すごい取り合わせだ。数日後、さらにカンチェリの演目が「Lonesome 孤軍」に変更になったという告知。これはもうECM者としては行かなければならない。

カンチェリはグルジアの、ヤンスク・カヒーゼと同郷で首都トビリシ出身。え!カヒーゼじいさんは2002年3月8日に亡くなっていたのか・・・。合掌(拙稿「ヨーロッパの精霊四人組としてのヤン・ガルバレク・グループ」参照)。カンチェリはECMで多くの作品を出している現代音楽作曲家である。トビリシは山に囲まれたひとつの風景であり、そこで、人々は故郷をひとつにし、連帯し、生き、歴史に翻弄されてきた。

さて、コンサートの感想。

カンチェリの「Lonesome 孤軍」。クレーメルが執拗にヴァイオリンの弱音をぎこちなく持続させる。バックでオケが不協和音全開で鳴らしたり、静かに揺らめいたり。このカンチェリをどう聴くか。オケのパッシブな鳴らしは紛争とか悲劇のたとえに聴いて、クレメルの持続した営みを困難な奏法をひたむきにぎこちなくとも不遇をありのまま生きる旋律として聴いて、その対比の祈りのようなオーラを聴く。しかし。そんな物語り的な記述に収束させていいのか、とも、ちと言葉に置けないところ、では、あった。いわゆる体裁が整った作品ではなかったところに感ずるものも発生したというか。何か音楽に痛みを感じるところがあった。

そんで。今回はアンサンブル金沢とクレメルバルティカが一緒にステージに上がったのだけど、総量として音量が上がっても、それぞれの響きの軽やかさ優雅さは失われてしまっていた。この夢のような取り合わせなのに、足せばいいのではないという厳しい現実、裏がえせば、それだけアンサンブル金沢は一日にして成らないことの証明であったか。


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02月21日(日)
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