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羽積風narration
by 汐 楓菜
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■お母さんへ
ようやくちょっと落ち着いたわ。
まだいろいろやらなあかんことはあるけどさ。
あんたら離婚したからお父さんは居らんし、
親戚は居らんし、兄弟も居らんし、
ほんまに私一人きりやから大変やったよ。
私、会社でのお仕事だけはできるらしいけど
ああいう社会性の必要なことってイマイチ駄目やからさ。
でも、友達も彼氏も来てくれたし大丈夫。
発見したときに一生懸命心臓マッサージしてくれたのが、
いつもいちばん理解してくれてる私の友達やで。
お骨持って帰ってきたときに急いで祭壇作ってくれたのが、
ずっといっしょに住んでる私の彼氏やで。
お母さんが倒れてるのん発見したん、5/11の夜やったわ。ごめんな。
お医者さんに来てもらったらさ、5/8ぐらいやってんて?倒れたん。
死因は心不全やて。
一瞬でのことやったんやと思いたいけど、傍に居てなかったからなぁ。
苦しかったんか?淋しかった?最期に何を思ったん?
まさかお母さんを孤独死させるとはなー。情けない。
なんだかんだ言うても、まだ56歳やったやん。若いやん。
もっと頑張ってくれると思ってたんやけど。こればっかりは、なぁ…。
先月くれた手紙で、めずらしく何か悩んで落ち込んでるみたいやったから
≪人生に遅すぎることはないらしいよ。
生きてさえいればさ、今からでもなんとでもなるよ、うん。≫
って返事書いたやろ、私。ちゃんと読んだん?生きてなあかんやん。
斎場で出てきたのを見たとき、ちょっとショックやったで。
あんなにプヨプヨ肉付いてたくせに、あんなにスカスカの骨だけになってさ。
それにしても、こんな時期に死ぬなよなー。
世の中どこを見ても母の日、母の日で、ツライやんか。
お母さんと電話した日のことは全部、手帳に書いてるねん。
最近は≪元気そうな声だった≫とかさ、そんな記録が多かったのに。
お母さんの友達も、近所の人も、言うてたよ。
「元気にしてはったのに」とか「よく笑うようになったのに」って。
なんやねん。ぜんぜんあかんやん。
いちばん最近くれた電話なんかさぁ、ほら、5/4の朝よ。
「あんたから貰った湯呑みが割れた〜。なんかあったら連絡して〜」
って留守電聞いたから、私の身が危ないんかってビクビクしてたわ。
お母さんの方やん!なんかあったんは。
その後すぐ届いた手紙に書いてたやん。
≪サンセットなんとかの『マイペース』って曲が好き。
ラジオで流れるの、楽しみにしてるの≫って。
だから、プロモーションビデオが出てるんやったら見せてあげよう
と思ってさ、DVDプレーヤーの検索してた記録が残ってたんよ。
私の、お気に入りに。それ見たらなんか泣けてきたわ。
ちなみに、サンセットスウィッシュやで。そのグループ名。
お気に入りなんて言うても、お母さんには何のことか解らんよなぁ。
私、「インターネットできるようにしてあげる」って言ったのに
結局まだパソコン買ってあげてないままやもん。
「携帯電話が欲しい」ってお母さんが言ってたのも、
そのうち買ってあげようと思ってるうちにそのままになってて…。
ケータイぐらい、すぐ買ってあげたらよかったのになぁ。
毎日電話っていうのは正直ちょっと難しいけど、
ケータイがあったら、毎日メールぐらいはしてたかもしらんのに。
お母さん、筆まめやし。きっと毎日メールくれるようになってたと思うわ。
そしたらさ、「あれ?今日はメール来ないな」ってなってさ、
もっと早く発見して、間に合ったかもしれないのかなぁ。
今日までには二回、大泣きしたわ。
一回目は発見した日の夜に。
ケータイの話みたいな「○○したらよかった」「○○すればよかった」
ってタラレバの後悔ばっかりがいっぱい押し寄せてきてさぁ。
今さらそんなこと考えてもしょーがないって判ってても、やっぱりな。
二回目は次の日の夜に。
少し寝て起きたら、白い布に包まれたあんたのお骨が視界に入ったんよ。
「お母さんが、いなくなっちゃった…」
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05月13日(土)
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