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かなしいうわさ
by 石井
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■フジロック感想文 3日目 その2
もう誰も期待していないと思いますが、俺の夏を終わらせるために、もう少しだけお付き合い下さい




Marva Whitney

うーん、オオサカモノレールの演奏がカタいなあ(;´Д`) 緊張してるとかではなく、音にしなりがない。カチカチでポキッと折れそう。ファンクしなやかにしなってナンボ。カタいのはいけない。
しかしマーヴァはそんな音の上をビヨンビヨンとしなやかに跳ねていった。声質に衰えがないのにも驚いたが、なにより全盛期のしなやかさをしっかり湛えた声の力に圧倒された。ということで、バンドの音が入らない、マーヴァ本人のピアノ弾き語りで歌われた超スロウブルーズが一番沁みました。Unwind Yourselfを演らなかったのが残念だけど、おおむね満足。








そしてジョナサン。
昨日の苗場食堂はいわば余興。
今日が本番。マタアトデネ、だもんな。

けっこうな人が集っていて、ホッとする。数年前、ニック・ロウが出たとはこの1/3くらいしか客が居なかったというのに。ああ、みんなありがとうねありがとうね、と感謝の握手をしてまわりたい気持ちをアルコールでぐっと抑えながら、登場を待つ。
勿体ぶらずにひょこっと登場。サウンドチェックだけど、あたたかな声援が会場中から飛ぶ。今日もニコニコなジョナサン。手を振る。歌う。サウンドのチェックとしてではなく、目の前に集う俺らに向かって歌う。アカペラで朗々と歌う。笑う客。それを横目にトミーラーキンスがいつもの簡易ドラムセットをトコスカとチェック。


ひょこひょこっと、袖にひっこむ。

また、ほいほいっと、出てくる。本番だ。

Jonathan Richman

笑い、



歌い、



踊り、



沸いた



ジョナサンのヘンテコな踊りをみて笑う客。その笑いは「哂い」に近いようにも思えたが、それでいい。よい場所で、たくさんの人に、無心にへろへろ歌い無心にひょこひょこ踊るおっさんが、心から哂われている。良い光景だ。天国みたいだ。ジョナサンはエンターテイナーだとは思う、人を楽しませることを自分の歓びと考えている、でも、キングトーンズのエンターテイメントとはやっぱり違うんだ、気を使ってない、いや使ってるか、使っているとしても、彼女のためにおしっこした後は便座をさげておこうかな、という程度のささやかなものだ。ここには、ボケとか、ツッコミとか、出オチとか、空気読むとか、打算とか、計算とか、さっぱりなかった。ひたむきな思いと、健やかな哂いがあった。それでいいじゃないか。だって、ステージが終わったあとに、お客の皆が仲間達と交わしていた言葉には、ジョナサンへのまっすぐな賞賛と心からの笑いではちきれそうだった。俺はすばらしいライブのあとに周囲の人たちのこうした声を聞いてまわるのが大好きなんだけど、本当に皆賞賛していて、楽しげに笑っていて。「哂い」がなかった。 俺が願っていたとおり、ジョナサンは言葉も年代も知名度も超えてくれた。いやいやっ、超えてくれたなんて不遜過ぎるね、プロのエンターテイナーに対して失礼過ぎる。侮っていてごめんなさい。

セットリスト的には前日とほぼ変わらず。判ってはいたが、That Summer FeelingやIce Cream ManやMorning of Our Livesは演奏されなかった。しかたない、ジョナサンはあんな風でも、いやあんな風だからこそ、自分の通ってきた道なんかにはさっぱり興味は無くて、今しか見えてない。自分の今にそぐなうものだけで生きているんだろう。有名曲が演奏されずとも、Let Her Into The Darkness、Her Mystery Not of High Heels and Eye Shadowという、往年の名曲にも劣らない曲たちが素敵なダンスとともに奏でられた。デスモンド・デッカーによるレゲエの名曲「007(shanty town)」なんかも演ってくれて、嬉しかったな。









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09月05日(水)
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