ID:70753
えすぱっ子
by ひかる。
[1244435hit]

■クラブ選手権 東海予選 愛知FC戦
 開始3分、いきなり清水の決定機。LH成田が粘って戻したボールは一度DFにカットされるが、すぐにCH柴原が奪い返してFW鍋田にクサビを当てると、鍋田はDFを交わしてPA内へ、更にGKを交わして空のゴールに蹴り込むが、ゴール左ポストに直撃させてしまう。しかし、この決定機逸にもめげず、8分には横幅を大きく使った展開から鍋田が決めて先制。怪我からの復帰後、主将としてエースとして公式戦2勝1分のチームを引っ張っていた鍋田に、遂に結果がついてきた。その後も清水はボールをよく動かし、巧みにサイドに展開するが、この日はFW畑が「not his day」。12分の柴原の左CKにニアで頭を擦らしたのがファーに外れたのはともかく、14分に自らのサイドチェンジから柴原が1人ドリブルで抜いて右クロス、17分に石原の右クロスに鍋田が粘ってこぼれたボールに対して、ロケット打ち上げの「宇宙開発」をしてしまった。
 やがて流れは膠着、リードされても前に出てこない相手にCH田代やCH柴原がミドルで狙うが、得点に結びつかない。成田の思い切り良い突破は錆付いてはなかったが、34分にRH石原のボール奪取から鍋田のスルーパスで抜け出した場面では、クロスというらしくない選択。右足は殆ど使わない成田だが、角度のない位置を構わずニアを左足で撃ち抜いてこそ成田だろう。一方の愛知は専守防衛の状態で、ゴール前どころかボールを前に運ぶことすらできなかったが、藤枝明誠やジュビロ磐田とは違う清水エスパルスは、リスクの最小化が実に苦手。30分には相手の苦し紛れのロングボールにLB稲毛が競り勝ったところまでは良かったが、CB犬飼がダイレクトで繋ごうとして愛知FW10番にボールを献上。シュートは右に外れたが、この試合が負けたら終わりのトーナメントであることを思い出させてくれた。嫌な流れになりかけたが、前半終了3分前、エース鍋田の個人技で2点目。1対1でGKを抜きに行くのが、洗練されたプレーに隠れがちな鍋田のFWたる所以だろう。

 後半4分に3点目を挙げて安全圏に。石原は良くない時も得点に頻繁に絡んでいるが、それはこの得点場面に象徴される長い距離を走る能力と意志の賜物だろう。それだけにガス切れも早いのだが、最近は石原の後を任せられるベンチメンバーも充実してきた。その石原と鍋田は51分に交代。フリーランとポストプレーでボール回しの中心にいた2人がいなくなり、一方で後がなくなった愛知もSBの攻撃参加を解禁。更に52分の選手交代で7番をCBからCHの位置に上げ、CH7番、LB5番、LH8番のトライアングルで積極的に攻撃を仕掛けるようになった。名古屋戦では田代が一人、膨大なスペースのカバーリングに走り回っていたが、この日はその田代も攻撃参加して前へ。大量点に気が緩んだか、マークを離して簡単にクサビを入れられる場面が散見され、中でも87分、8番とのワンツーから左45度で放った5番のシュートは、1点ものだった (GK長島がセーヴ)。
 そうした課題も残ったが、組織を無視した個人の勝負になれば清水の持ち味が存分に発揮される。特に柏瀬、山崎祐といった外部加入の1年生としては、連携を無視できる展開は望ましかった。前半から散々ボールを回されて疲労した愛知DFのマークが緩かったこともあり、自らのスピードを遺憾なく披露。共に清水エスパルスユースとして公式戦初ゴールを記録した。奔放としたサッカーの中心にいたのが、後半2得点2アシストの田代と1得点1アシストの柴原。ハイテンポの展開にも自分のリズムだけで動かず、周囲を見て有機的に繋ぐプレーを見せ、一つ高いレベルにあることを証明した。とりわけ田代は武器である機動力だけでなく、単純な1対1にも強さを見せ、成長を感じさせる。また、田代に代わって後方で攻撃の芽を摘んだのが伊東渉。先発でも交代出場でも、既に組織の柱になれる存在になってきている。
 プリンスに比べて彼我の力量差は考慮に入れないといけないが、それでも80分間で8−0という結果はそう簡単に出るものではない。自信を持って良いのではないだろうか。

05月30日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る