ID:70753
えすぱっ子
by ひかる。
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■Jユース杯 ガンバ大阪戦 (H)
 だが、格上に先制されながら、意気消沈とはならなかった。そもそも中盤の守備は、シュート2本に抑える健闘を見せていたわけだ。豊富な運動量かつ1対1で優位に立つ前田を、同期の佐野傑・杉山が頻繁に中に絞って助けていたが、失点後はバイタルを青木に任せ、3人が前に出る。そして、互いに前掛かりの中盤勝負になった時、ガンバは意外な脆さを見せた。25分、CH前田がCH青木とのパス交換でボールを落ち着かせ、FW柴原へ縦パス。柴原のスルーパスにRH佐野傑が飛び出し、切り返して左足でシュートを放つが惜しくも枠外 (これが2点目の伏線となる)。35分、前田とLB稲毛と2回、前線で仕掛けて追いついた後も37分、FW池上がCB橋本に潰されて得た中盤のFKを望月恭が素早く再開、DFの裏に落としたボールをLH杉山がミートするが、威力なくGK森廣。前線で体を張る池上の献身も素晴らしかった。対するガンバは39分、RB臼井のロングボールのこぼれ球に大塚が突っ込んだぐらいで (枠外)、清水が優勢を保って前半を終えた。

 後半、清水の勢いは加速する。いきなり46分、前に出てきたCH田中から前田がボールを奪い取り、持ち運んで縦パス。受けた柴原が右サイドに捌き、再び佐野傑が飛び出してシュート。GK弾いたところを逆サイドで杉山が拾ってシュートはCKに逃げられる。49分、右サイドから戻されたボールを青木がサイドチェンジ、LB稲毛が再度返すと青木が35Mミドル。この距離でバーに直撃させて本気で悔しがるあたりが、青木の真骨頂だろう。50分、フィールドを大きく使った綺麗な崩しで逆転した清水は、遂に宇佐美を引きずり出す。しかし、宇佐美は大塚とプレーゾーンが重なるのを嫌ってか、左サイドを漂うばかりで運動量が少なく、大塚もそれを嫌ってか中盤に下がることなく前線に張るようになり、ガンバの攻撃はむしろ停滞したように見えた。
 対する清水は快調。59分、前田の奪取から池上の右クロスを柴原がボレー、62分、田代のダイアゴナルフィードを柴原がサイドに開いて受け、右クロスに池上がニアで頭を合わせるが、GK森廣が左手一本でCKに逃れる。65分、佐野傑の右CKのこぼれ球を拾った前田のPA内への放り込みを、稲毛が左足で軌跡を変えたが、GK森廣が反応。ボールを支配し、ほぼ一方的に攻めていただけに、ここで決めておけば大差をつける可能性もあった。だが、現実はそうはならず、70分、微妙な判定ながら大塚のPKで同点に追いつかれてしまった。その後の清水は72分、ドリブル突破した池上から柴原がポストになり、佐野傑が切れ込みつつ左足で狙うが枠外。互いに徐々に運動量が落ち、交代で新しい選手が入って、膠着状態となる。それでも個で決められる力を持つ両者、89分、宇佐美がポストに入った大塚とのワンツーで左45度10Mから濡れたピッチを這わせるシュートを撃つが、GK長島はこぼすことなくキャッチ。清水もロスタイム、PA内左側での混戦から強引に縦に持ち出してシュートするが、ニアポストに阻まれた。

 独力でボールを奪い、持ち運び、前線で仕掛けまで行う前田は、間違いなくフィールド上で最も優れた選手だった。2失点目の起点となったが、これはマイナス面では捉えるのでなく、試合を通してこうしたチャレンジで中盤のガンバのプレスをいかに交わし、次の展開を容易にしていたか、そのプラス面を評価すべきだろう。豊富な運動量を前に向かって出せている時の前田は、本当に凄い。その前田の周囲で支えたのが、同期の池上・佐野傑・杉山。とりわけ佐野傑は近づいては前田に匹敵する足技でショートパスを繋ぎ、離れてはスピードで活かしてドリブルで切り刻んだ。盛んに最前線と入れ替わる姿は、ちょっとだけクリロナっぽかった。この試合が復帰戦となった稲毛は、足下勝負の多かった試合の中で、180cm超の神門・三ノ宮にフィジカル真っ向勝負で勝利。交代出場の大森にも仕事をさせなかった。確実な守備は攻撃面でも自信をもたらし、得意の球足の速いクサビだけでなく、迫力満点のドリブルも見せていた。

11月09日(日)
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