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ビバ彦♂日記
by ビバ彦
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■「ミニハムずの愛の唄」評
例えばジョン・ゾーンのハードコア/スラッシュ期の作品が好きでよく聞いてたんだけど、なにか線の細さがあるようで気にかかって仕様が無かった。マイク・パットンなんかと組んで迷彩パンツに軍隊ブーツを履いても、どこか無理しているような。
結局、J/Zはもう聞かなくなった。

例えば吉本隆明の著作が好きでよく読んでたんだけど、「マス・イメージ論」以降のサブカルチャーへの阿り方がダサくて気になって仕様が無かった。ばなな(日芸)経由のサブカル臭が紛々と立ち登って、サブカルの最前線を担っているつもり(勘違い)だった筆者はムカつきまくってた。
結局、吉本はもう読まなくなった。

例えば松本大洋の漫画が好きで「ゼロ」や「花男」はそれこそ擦り切れるまで読んだけど、それ以降の微妙な同時代性を匂わせる作品は(以下略)
結局、松本はもう読まなくなった。


何の話かというと、ミニモニ。の新譜について語ろうとしてるのである。

正確に言うとミニハムずのデビューシングルの話になるのか?「ミニハムずの愛の唄/ミニハムず(歌:ミニモニ。)」っていうクレジットだし。
結論的からいうと、つんくは恐ろしい傑作をドロップしてきやがった!個人的な2001年ベスト1は確定でタンポポの「恋をしちゃいました!」だったんだけど、それに肉薄する出色の出来栄え(メロンヲタには悪いけど「This is 運命」は3位陥落)。

ワンギャルの「花吹雪BANG BANG BANG」を自己引用した出だしからしてぱっくんちょなこの曲、軽く指摘するだけでも、ドアーズ「Light My Fire」風のキーボード、ヴェンチャーズ「Diamond Head」、「アタックNo.1」まで、パクリパクリの暴風雨。ただパクリと言うか引用の仕方が絶妙に暴力的で心地よい。つぎはぎだらけのパクリラッシュの果てに、笑えて、バカにできて、口ずさんでしまう極上ノベルティソングが待っているなんて……。感触的にはGTO'S(マンガのアレでは勿論無くてボディサウンドのバンドでもなくて、ザッパプロデュースの限りなくチープなグルーピーバンド)的なローファイオモチャ箱POPってところかな?

元々、つんくにはインテリジェンスを回避する本能的な才能があるように思ってたんだけど、今回のミニハムずではっきり確信した。彼は小手先の知性やらこまっしゃくれたトレンド、売り物としての同時代性などには興味を示さない、言葉の真の意味での本格的なクリエイターであることを。先端のものを先端のものとして打ち出すことのダサさ、ダサいものをダサいものとして打ち出すことの先鋭性。つんくは99%のクソ真面目さと1%の遊び心をもって後者を選択する。
実際のところ、単に彼は彼なりのエンターテインメントの本道を歩もうとしているに過ぎないのだろうが、それこそ彼の表現者としての誠実さを表しているのだと思われてならない(つんくはこと仕事となると非常に真面目というのは有名な話)。それがこんなチープな作品で端的になるとは、何という逆説!

人並みには音楽を聴いてきた。
人並みには本を読んできた。
人並みには漫画も読んだ。
もう、小手先の差異に振り回される表現はこりごりだ。

ぶっとくド熱いグルーブを放つ大衆芸術を送り出し続けるつんく、間違いなく彼は今現在の日本の音楽シーンの中で最もエッジな存在だと思う。引き続き応援する。



12月27日(木)
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