ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■アメリカの玩具メーカーの重役全員に爆笑された「リカちゃん」
『人生ゲーム 人生は1マス5年で考えよう』(佐藤安太著・マイナビ)より。

【私は、リカちゃんを米国でも発売しようとして、マテル社に話を持ち込んだことがあります。しかし、そこで玩具というのは、それぞれの国の文化に深く根ざしているのだということを思い知らされます。マテル社の重役が並ぶ前で、私はリカちゃんの実物を出して、特徴などを説明しました。
「リカちゃんにはわたるくんやいづみちゃんという友だちの人形もあります」
 マテル社の重役たちは、みな怪訝な顔をしています。
「さらに、リカちゃんにはお母さんとお父さんの人形もあります」
 リカちゃんママとパパの人形を見せると、重役たちは目を丸くして驚いています。
 そして、どなたかが尋ねました。「これは日本で売れているのか?」と。「大ヒットです」と答えると、重役全員が腹を抱えて爆笑しだしたのです。「人形にパパとママがいるって? そんな遊びをする子はアメリカにはいない」と言うのです。
 後でどういうことかがよくわかりました。人生ゲームの話のところでも少し触れましたが、日本とアメリカでは子どもに対する文化がまったく違っていたのです。日本の社会では、子どもは貴い存在で、親はできれば子どもはいつまで経っても子どもであってほしいと願っています。お子さんが成長して、立派な大人になり、家庭を構えた後でも、親はついついお小遣いを渡したくなってしまいます。親にとって子どもは永遠に子どもなのです。
 しかし、米国の社会では、子どもは「できるだけ早く大人になるべき存在」です。最初から子どもを”未成熟な大人”として見ているのです。
 ですから、親は子供がいち早く自立することがうれしい。幼いときも、自分でトイレに行けるようになるとうれしい。自分で着替えができるようになるとうれしい。自分で歯磨きができるようになるとうれしい。高校生になると、恋人を作って(健全な)デートをするようになるとうれしい、社会活動に参加するようになるとうれしい。卒業して、仕事を始め、経済的に自立をするようになるとうれしい。米国の親は、子どもがひとつひとつ大人になっていくことに喜びを感じるのです。
 一般的に、身体が大人と同じ大きさになる高校生のころには、社会全体が子どもを大人として扱い、それに伴う責任も求めるようになっていきます。
 子どもがリカちゃんで遊ぶときは、リカちゃんに自分自身を投影します。そこにお父さん、お母さんの人形が登場するというのはありえないというのが米国人の感覚です。米国の子どもたちが、ごっこ遊びをするときは、子どもたちだけで大人の社会を模した遊びをするべきという感覚なのです。
 米国ではバービー人形に人気があることがよくわかりました。女の子たちは、大人の女性であるバービーに美しい洋服を着せて、自分がいずれそうなるべき姿をそこに見ていたのです。リカちゃんのような等身大の着せ替え人形は、米国人から見ると、成長を止めてしまい、いつまでも子どもの状態に留まらせるよくない玩具という印象を持たれてしまうのです。】

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 ダッコちゃん、リカちゃん、人生ゲーム、ミクロマン、チョロQ、トランスフォーマーなど、数多くの定番玩具を世に送り出したタカラの創業者、佐藤安太さんの自叙伝。佐藤さんは1924年生まれの現在89歳で、まさに「戦後の日本のおもちゃの歴史をつくってきた人」です。

 僕の感覚からいうと、リカちゃんに比べて、バービーは「かわいくない」のです。
 周りの女の子たちも、「なんでアメリカでは、あんなケバい人形がウケるのだろう?」と首をひねっていた記憶があります。
 まあ、「かわいいと感じるものの違い」なのかな、ということで、なんとなく結論づけていたのですが……

 この佐藤さんの話を読んでみると、「なぜ、かわいくないバービーが人気だったのか?」という発想そのものが、どうも間違っていたみたいです。
 アメリカの親の感覚からすると、「おもちゃとは、子どもを成長させるためのものでなくてはならない」のですね。
 だから、子どもにとって「現状維持」を促進することにしかならない、かわいいリカちゃんは、むしろ「害悪」だと感じるのです。

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05月31日(金)
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