ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■自衛隊を指揮した「クロネコヤマト」の被災地支援
『できることをしよう。〜ぼくらが震災後に考えたこと』(糸井重里/ほぼ日刊イトイ新聞著・新潮社)より。

(糸井重里さんと木川眞(ヤマトホールディングス社長)の対談「クロネコヤマトのDNA。」の一部です)

【糸井重里:最初にうかがった、救援物資を運ぶチームのことについて、もうすこしくわしくお話しいただけますでしょうか。

木川眞:「救援物資輸送協力隊」ですね。

糸井:そう、それです。その活動は現在も続けられている。

木川:続けています。

糸井:救援物資がちゃんと被災者のみなさんに届くのか、ということについては、心配されたり話題になったりいろいろなかたちで言われていますが、実際のところはどうなんでしょう。

木川:それはですね、救援物資をどこにどれだけ送るか、送った物をどうやって管理するか、そういう整理整頓が、できていないケースがやっぱり多いんです。

糸井:ああ……。

木川:災害が起きたときには、常に同じことが起きているのですが、救援物資の管理については地方自治体のかたが仕切るわけです。多くの場合そのかたには、ロジスティックス(物流・資材調達)の専門知識がありません。

糸井:そうでしょうね。

木川:その一方で、救援物資はどんどん集まってくるわけです。水が来る、食料品が来る、衣類も来る。そしてそれらは、およそ物流の拠点にふさわしくない体育館であったり、公会堂であったり、学校であったり、そういう場所へまずは運び込まれます。ところが、そういう場所は、中は広くていいんですが、出入り口が狭いんです。救援物資はどんどん来るから、どんどんそこに入れられていく。そうするともう、最初に入れられた荷物は出せなくなる。

糸井:ボトルネックだらけになるんですね。

木川:そう。必然的に「後入れ先出し」になるんです。後から来たものを最初に出す。いちばん最初に入れたものが食料品だったら、賞味期限が切れてしまいます。

糸井:うーーん……。

木川:ほしい物がいちばん奥にあるとわかっていても出せない。それどころか、奥に何があるのか誰も知らない状況になる。

糸井:簡単にそうなってしまいそうですね。

木川:あとは、これ、ほんとうに、とある避難所で見たんですが、そこにはひとりも赤ちゃんがいないのに哺乳瓶と粉ミルクの段ボールがどーんと置いてあったんです。つまり、それを必要とするところはほかにあるのに、まったく別のところに行ってしまっている。

糸井:せつないなぁ。

木川:そういう状況をロジスティックスの専門家が仕切ると、うまく回転がはじまるんです。たとえば、気仙沼市では、「ぜんぶヤマトに任せる」ということになりました。もう自分たちの手に負えないと。それで、大混乱してる状態でぼくらが引き受けて、二日目には完璧に「どこに何がいくつあるか」をパソコンに入力し、その置き場所のレイアウトも完了しました。

糸井:所番地をつけたわけですね。

木川:そう、所番地をつけた。すると、歯ブラシ一本とか、長靴一足とか、ほしい物をすっと出してお渡しすることができるようになりました。

糸井:たった二日で。

木川:忘れてはいけないのが、自衛隊の方々の協力です。ヤマトがその場を仕切ると決まってから、自衛隊のみなさんがですよ、ぼくらの支配下に入って、指示通りに動いてくれたんです。これはね、ほんとに……。

糸井:すごいっ! もう、立ち上がって拍手したいですよ(笑)。

木川:ひと言の文句もなしに、われわれの指示で動いてくださる。自衛隊っていうのはすごいな、と。】

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 この対談は、2011年の7月7日に行われたものです。
 ヤマトホールディングスは、東日本大震災に対して、「宅急便1個につき、10円の寄付」を行うことを表明しました。
 これは合計130億円から140億円の寄付となり、年間純利益の4割くらいにあたるそうです。

 この糸井さんと木川さんの対談を読んで、僕がいちばん印象に残ったのは、「救援物資の運用のノウハウ」の話でした。

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06月13日(水)
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