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活字中毒R。
by じっぽ
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■トラウマ絵本『ねないこ だれだ』
『俺だって子供だ!』(宮藤官九郎著・文春文庫)より。
(宮藤官九郎さんが書かれた、愛娘「かんぱ」ちゃんの育児エッセイをまとめた本から)
【今回も絵本について。
かんぱが生まれなかったら全く関心を持たなかったであろう絵本の世界。しかし読んでみたら、これがなかなか興味深い。仕事で大人向けのストーリーばかり考えてるせいか、その自由な発想にいちいち驚かされます。
中でも度肝を抜かれた一冊が『いやだいやだ』(せな けいこ、福音館書店)という20ページほどの作品。なんでも「いやだ!」とダダをこねる女の子ルルちゃんの、至ってシンプルなお話です。
「いやだ いやだって ルルちゃんは いうよ」
「なんでも すぐに いやだって いうよ」
「それなら かあさんも いやだって いうわ」
「いくら よんでも だっこしない」
……という調子で、要するにわがままばかり言ってるとママはもちろん太陽も、おやつのケーキも、お気に入りの靴も、ぬいぐるみのクマも、みんな「いやだって いうよ」と続きます。
普通の絵本って、どんなに奇想天外な内容でも最後はちゃんとオチがつく。例えば『ウサギとカメ』ならカメがウサギを追い越し、努力って大事なんだなーという教訓があったりするもんです。
ところがこの『いやだいやだ』には明確なオチがない。起承転結の結にあたる部分がごっそり無いのです。みんなが「いやだいやだ!」と言い出し「そうしたら ルルちゃんは どうするの?」という問いかけで物語は唐突に終わります。マジで!? 最後のページはご飯粒かなんかでくっついてた? と確認しましたが、2ページいっぺんにめくったわけではなく本当に終わりでした。
(中略)
絵本業界も過渡期なのでしょうか。ありがちな展開じゃあ子供の心は掴めない。新しさを要求されるのも当然だよなーと巻末を見たら、なんと初版は1969年。俺が生まれる前じゃん!
作者はせなけいこ先生。
これを含む『いやだいやだの絵本』で産経児童出版文化賞を受賞しています。40年近く愛され続けている名作だったのです。
たまたまもう1冊、せな先生の絵本が家にあったので読んでみた。『ねないこ だれだ』(福音館書店)という、夜ふかしの子供が主人公のお話なんですが、これがまた後味が悪い。
時計が「ボン ボン ボン……」と夜の9時を告げる。こんな時間に起きているのはだれ? 黒ねこ? ふくろう? どろぼう? 「いえ いえ よなかは おばけの じかん」。おばけが出て来た! 果たして寝ない子の運命は? 最後のページにはお化けが子供の手を掴んで空へ消えて行く絵が。
「おばけに なって とんでいけ」……が――――ん!】
〜〜〜〜〜〜〜
僕の家にも『ねないこ だれだ』があるんですよ。
それで、何気なくうちの息子に読んでいたのですが、このラストには、僕も「がーん」でした。
うわー、なんかとんでもないものを読み聞かせてしまったんじゃないか?と思いましたし、いや、「夢オチ」で、もう1ページあるんじゃないかと、本を確認してしまいました。
いやまあ、これはこれで、夜、なかなか寝付いてくれない子供に「おばけに なって とんでいけーーっ!」ってプレッシャーをかけるのに使えて、親としてはけっこう便利な1冊ではあるんですけどね。せな先生が、そういう意図で書かれたのかどうかはわかりませんが。
それでも、「物語で子供に恐怖心を与える」というのが、果たして良いことなのかな?と疑問になってしまうこともあるのです。
それこそ『ウサギとカメ』みたいな教訓的な話のほうが子供のためになるんじゃないか、とか。
ただ、子供は怖がりながらも、せな先生の絵本の冷酷さというか、「めでたしめでたし、ではなくて、最後の結論を自分に投げ返されるような世界が、嫌いじゃないみたいなんですよね。だからこそ、40年以上も読み継がれてきたのでしょうし。
子供は子供なりに、自分の周囲の世界の矛盾みたいなものと、毎日闘っていて、「大人が読んでもらいたい物語」には、物足りなさを感じているのかもしれません。
「こんな子供っぽい絵本なんか読みたくないっ!」とか思っていたりして。
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05月28日(土)
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