ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「ああ、アタシも和式は無理」と敬遠する女たち
『幸菌スプレー』(室井滋著・文春文庫)より。

【2007年幕開けまであと数日という土曜、都内のデパートへ、仕事帰りに寄った。
 時期的に混雑しているだとうと思ってはいたが、どのフロアーも想像以上。
 プレゼントを買うにも、レストランフロアーのどの店に入るにも、気が遠くなるほど長い列に並ばなくてはならない。
 いつもの倍以上の時間がかかったが、何とか買い物や食事を終えると、私とマネージャーのタミちゃんはヤレヤレと溜め息をつき合った。
「こりゃあダメだね。どうしても必要な物だけは買ったから、あとは年が明けて、もっと落ち着いている時に来ようよ」
「大体、この時期の店員さんは臨時に雇われた人が混ざってるから、却ってややっこしい。馴れない人に当たっちゃうと、ラッピングもひどい上に時間もかかっちゃうもの」
 そして、こんな会話を交わしながら、レストランフロアーの女子トイレに入ったのだが……。
「おお、何と」……というべきか、「やっぱり」というか、トイレがまたまた、目眩がしそうな程の長蛇の列で人が溢れていた。
 もっとも、大きなデパートなのでトイレには更衣室まで付いており、BOXの数もけっこうある。しばらく辛抱すれば、数分から、少なくとも十分の内にBOXには入れるはずだ。
 別のフロアーのトイレを回ったところで、似たりよったりだろううと思い、私達はくちくなったお腹を摩(さす)りながら、仕方なくどの最後尾に並ぶことにした。
 され、どんどん順番が進んで、自分の番まであと五人といったところで、突然一番先頭の若い女性が、空いたBOXの中をチラリ覗くや否や、クルリ踵を返して戻ってきてしまった。
 何やらとってもガッカリ顔。
 さては、便器の中が”花ざかり”だったに違いないと私も反射的に顔をしかめたが、彼女は新しく先頭に立っている人に向かって言ったのだ。
「スミマセン。あそこ和式のトイレだったんですよ、私、和式が苦手なので、よかったら、お先にどうぞ」……と。
 ところがだ。”問題”はこれをきっかけに始まった。
 どうぞと言われた女子大生風の女の子が、「ああ、アタシも和式は無理」と言い、クルリ振り返ってさらに後ろの新妻風女性に和式を譲る。
 しかし、この新妻風も、「私もダメです。どうぞ」とさらにさらに後ろへ……。
 つまり、「苦手」「無理」「ダメ」「嫌い」「できない」と和式トイレを敬遠する言葉のバトンが渡されて、とうとう私の所まで来たというわけだ。
 私の前の二人の女性など、どう見ても私より年上のオバチャン二人組なのに。これを“問題!”と言わずして、何と言うべきか。
 私は一応、自分の後ろに立っているタミちゃんに、「和式、行っとく?」という目を向けてみたが、「いやいや」と無言で首を横に振ってみせたので、「ならば!!」とキリリ前に向き返った。そして、「私、和式、使わせてもらいます。お・さ・き・に!」と、宣言するように言い放ち、五人とびでBOX通路に躍り出たのであった。
 さて、久し振りに和式トイレにしゃがんで、眼下の金隠しを見つめながら、私はしみじみ思った。
「あんたも嫌われたもんだねぇ」……と。】

〜〜〜〜〜

 僕は男なので、世間の「女子トイレ事情」には全くもって疎いのですが、この室井さんの話にはちょっと驚きました。
 「和式」は、そんなに嫌われているのか……と。

 そもそも、男性の場合には、トイレでBOXを使用する機会は「大」の際に限られるので、BOXを利用する頻度は少ないのです。
 考えてみれば、僕もやっぱり、「どちらでも選べる状況」であれば、「洋式」を選ぶんですけどね。「和式」にずっとしゃがんでいるとけっこう足腰に負担がかかるし、服が汚れたり、跳ね返ってきたりするリスクも高そうだし。
 デパートなどでも、男性用のBOXは、ほとんど洋式で、和式が数か所、というくらいの割合ではないでしょうか。
 とはいえ、この話のように「順番待ちをして並んでいるような切迫した事態でも、和式はパス」ということは、男性の場合にはまずありえません。
 まあ、男性用トイレというのは、長蛇の列でずっと待たされる、ということも、ほとんどないのですけど。


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06月04日(金)
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