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活字中毒R。
by じっぽ
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■児玉清「素人参加の最近の『アタック25』は、人生そのものなんです」
『阿川佐和子の会えばドキドキ〜この人に会いたい7』(文春文庫)より。
(阿川佐和子さんと児玉清さんの対談の一部です。2007年6月14日号の『週刊文春』掲載)
【阿川佐和子:『アタック25』の司会は33年目だそうですが、これはものすごい長寿番組ですよねえ。
児玉清:目立たないから続けられた感じですよ。それとありがたいのは、あの番組の奥の深さなんです。一度として同じことがない。出る人は毎回違うし。
阿川:解答者のみなさんは素人の方で。
児玉:最近は特に。昔はクイズマニアばかりで少々厭味、鼻高々で「俺はこれだけ知ってんだ」みたいなね。だって「ガ行で始まる県は岐阜県の他に何?」と聞いてすぐに「群馬県」って答えられる人が偉いと思う?
阿川:一応、驚嘆はしますよ。「おお、すごいな」って。
児玉:たしかに。でも素人参加の最近のアタックは人生そのものなんです。終わった後、誰もが必ず言うのは、「あのとき押していれば勝ってた」「答え知ってたのに押せなかった」って。この連続。
阿川:だって絶対的にリードして誰も追随する人間がいないのに、あっという間にコロコロって(パネルが)2枚になっちゃったり。
児玉:するとね、何を要求しているかっていうと、勇気なんですよ。
阿川:零コンマ何秒かの判断。
児玉:そう、例えば「遠視を矯正するメガネに用いられるのは凹レンズと凸レンズのどっち?」という問題で、頭の中では「凸レンズ」と思っているのに、ボタン押した途端に「凹レンズ!」って言っちゃうのね。
阿川:アッハッハッハッハ。
児玉:そこらへんの人間の機微はたまらないですね。快調に走ってた人が、「勝ち」を意識した瞬間から押せなくなったり。
阿川:ゴルフと同じだ。
児玉:そう。逆に、何も押せずにいた人がアタックチャンスのときに何となしに押して、どんどん正解してパッと勝っちゃう。でも僕はあの番組を一度としてちゃんとできたことがないんです。何度やっても悔いが残っちゃう。
阿川:司会者として?
児玉:ええ、アタックの理想の形とは何なのか? 考えても答えにたどり着かないんですよ。例えば、「さあ、赤が答えるのか、青が答えるのか」って赤と青が競ってるときに、それまで何も押さなかった白がプシュッと押して正解して終わっちゃう。そのとき僕はどんな言葉でまとめればいいのか。
阿川:理想高ーい、児玉さん!
児玉:理想だけは高いの、努力しないんだけどね(笑)。
阿川:いえいえ、努力もなさってます。じゃあ飽きないんですか?
児玉:そう、何度やっても飽きないんですよ。今そこを言おうと思ったの! 25マスでありながら千変万化なんだよね。ただ、あの番組には欠点があったんです。十字ができたときに、答える人が損だと。
阿川:わかんないんです、私。角を取れば強いってことぐらいしか。
児玉:十字ができた後に答えると、次の人に角を取られる可能性が出てくるんです。すると、角を取るまで答えない人がいるんですよ。一時、いくら問題出しても全員答えないときがあって。中には、わざと間違って立ったり。
阿川:えーっ!
児玉:僕は「この番組はこれで終わったか」と思ったの。で、スタッフがいろいろ考えたんだけど、そういう時はものすごくやさしい問題を出すんです。
阿川:「日本で一番高い山は何ですか?」なんて(笑)。
児玉:そうそう、そんな問題を続けたり(笑)。解答者との攻防戦があったの。
阿川:面白ーい。
児玉:ところが、策を練った人間っていうのはね、策に溺れるんです。待ちに待って「さあ答えよう」とボタン押したからといっても、4人いるから権利が取れるかどうかはわからない。誤算が出てきてガタガタになる。
阿川:タイミングを待ったのに。
児玉:しかも十字のところで答えなかった人たちが勝てたかというと勝てない。むしろ、そのとき果敢に打って出た人のほうが勝っちゃうケースが出てくる。番組を眺めてた人たちも、そういう推移を見て「策を弄さないほうがいい」と気づいてくれた。
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01月09日(土)
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