ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「この瞬間、新サービスは『ニコニコ動画』というふざけた名称に決まったのだった」
『ニコニコ動画が未来をつくる〜ドワンゴ物語』(佐々木俊尚著・アスキー新書)より。

【ではこれ(ニコニコ動画のプロトタイプ)を早急にリリースするとして、どういうかたちで公表するか。
「コンセプトは」と川上(量生・現ドワンゴ会長)はみんなに言った。
「とにかく誰も見たことがないネットのサービスだ」
 YouTubeも含めてさまざまなウェブのサービスを調べて、機能比較表を作ってみた。たいていのサイトには「お気に入り」「コメント」といった機能がついている。
 でも、こういう機能をどんどん付け加えていくと、どこかで見たことのあるような印象のサイトにしかならないんじゃないか?
 だったら、全部やめよう。機能比較表に○がついているような機能は全部取り除いてしまって、逆にシンプルで印象深いものにしてしまうんだ。
 デザインのロゴも、かっちりとしたカッコよくクールなデザインが流行っていたけれども、そんなものはダメだ。思いきりいいかげんな脱力系のにしよう。
 違和感をもっと出すために、トップページもインパクトあるものにしよう。最新のコメントがいきなりウェブページをスクロールしているようなデザインはどうだ。きっと初めて見た人は、
「なんじゃこりゃ?」
 と他のサイトとは違う何かを感じてくれるに違いない。
「じゃあ、サービスの名称はどうする?」と誰かが言った。
 川上が答えた。
「なるべく怒られにくい名前にしようよ」
 当時、YouTubeは著作権侵害の問題でテレビ映画業界と激しく対立し、訴訟も起こされていた。新しい動画サービスはそのYouTubeから動画を勝手に引っ張ってきて利用してしまうのである。国内の著作権者かあ非難される可能性は十分にあったし、さらにいえばYouTubeから文句を言われる不安もあった。
「YouTubeはカッコいい言葉だから、『ユーチューブけしからん!』っていいやすいよね。だったらさ、いいにくい気が抜けるような名前にしようよ」
 たとえば?と聞かれて川上はさらに言う。
「表面だけ取り繕ったようなふざけた名前があるじゃん。ニコニコローンとかニコニコ金融とか。明らかにブラックぽいのに、楽しい名前。だからニコニコ動画とかさ」
 そこまでしゃべると、とたんにひろゆきが大爆笑した。
「それおもしろい! 絶対それ!」
 大受けである。
 この瞬間、新サービスは「ニコニコ動画」というふざけた名称に決まったのだった。
 しかしこれではまだ完璧ではない。そもそも最初のスタートは、
「ライブコンサートでの盛り上がりをネット上で再現させる」
 というものだった。ただ単にだらだらとコメントが動画の上に表示されるだけでは、ライブの生々しさを表現することができない。
 戀塚は最後の仕掛けとして、試験サービス実施中にプログラムを改造し、
「弾幕」
 を仕込んだ。
 布留川が作った第2のプロトタイプは、コメントはランダムに画面上に表示され、コメントが一定数以上増えて画面が埋まってくると、コメント数をわざと間引いて表示させていた。コメント同士の衝突回避を実装すると手間が増えてしまうため、プロトタイプ段階ではこれを避けていたのである。
 しかしニコニコ動画では、特定の場面でコメントが大発生して祭り状態になったら、それを思いきり爆発的に盛り上げたい。それこそがライブの生々しさだ。
 その祭りのイメージとして、戀塚は最初は「点呼」のようなものを考えた。点呼というのは2ちゃんねるの実況板などでよく行われている風習で、ミュージックビデオのサビの部分に来たらみんなでサビのフレーズを同時に書き込んだり、人気タレントが出た瞬間にいっせいに、
「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!」
 と書き込むものだ。実社会の点呼と違って、みんなで順に数字を口に出していって人数を数えるわけではない。
 これが動画で起きたらどうなるか。点呼が起きた瞬間に、コメントがものすごい勢いで増えていく。戀塚は最初、コメントを画面の上部から順番に表示し、どんどん下部へと増やしていって、さらにそれ以上増えたら下に寄せていくという表示方法を考えた。もちろんこの段階ではコメント同士の衝突回避は行っている。

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11月24日(火)
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