ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「神舟7号映像捏造疑惑」と「他人を笑いものにしているつもりの人間」の脆さ
『と学会年間・BROWN』(と学会著・楽工社)より。

(「と学会」会長・山本弘さんのまえがき「知識を蔑む者は足をすくわれる」から)

【2008年秋、日本のネット上で、「神舟7号映像捏造疑惑」が持ち上がった。9月27日に中国の宇宙船・神舟7号が行った船外活動の映像に、画面上方に向かって移動する「泡」のようなものが写っている。これは宇宙で撮影されたものではなく、プールの中で撮ったニセの映像に違いない……というのである(http://dic.nicovideo.jp/v/sm4765291)。
 その少し前、北京オリンピックの開会式の映像でCGが使われたり、少女の歌が口パクだったりで、中国の印象をかなり落としたのは事実だ。しかし、この映像に関しては、捏造の証拠はまったくないと断言できる。
 映像の最初のほうで、飛行士が小さな国旗を振っているのだが、その動きはまさに真空で無重力の状態の動きなのである。水の抵抗らしきものは見られない。また、実際にプール内で行われた宇宙飛行士の訓練映像では、水のせいで画面がかなり青みがかっているが、神舟7号の映像ではそんなものは見られない。水中ではないのだから、謎の物体も「泡」ではありえない。おそらく宇宙服や船体からはじけ飛んだ何かのゴミだろう。
 さらに詳しく知りたい方は、宇宙開発に詳しいライターの松浦晋也氏のブログを参照していただきたい(http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/7/index.html)。
 それにしても、捏造説を主張する者たちの発言には、まったくあきれる。「背景に星が写っていないのがおかしい」「旗の動きが無重力とは思えない」「光源が不自然だ」……それも1人や2人ではなく、大勢の人間がそう言っているのだ。実際には、スペースシャトルや国際宇宙ステーションの船外活動の映像にも、背後に星なんか写っていない。宇宙飛行士や宇宙船に露出を合わせると、星は暗すぎて写らないのだ。
 つまり「無重力とは思えない」「不自然だ」などと言っている連中は、本物の宇宙での船外活動の映像も、宇宙飛行士のプールでの訓練映像も、まともに見たことがないのだ。それなのに、自分には映像の真偽を判断できる能力があると思い上がっている。
 この騒ぎを見て、僕は本当に腹が立ち、日本人として恥ずかしくなった。当人たちは「捏造だ」と騒いで中国を笑いものにしているつもりなのだろうが、実際には日本人の知的水準の低さが世界に宣伝されてしまったのだから。

 一般人の頭の中にある「宇宙」のイメージは、SF映画やマンガやアニメから得たものである。星の海の中に地球や宇宙船が浮かんでいる映像を見慣れているもので、それが本当だと思いこんでいる。「宇宙で撮影しても星は写らない場合が多い」という、カメラについての基礎知識があればすぐわかる程度の情報でさえ、知られていない。
 そんなこと知らなくても日常生活に支障はない? まあ、普段ならそうだろう。しかし、今回の神舟7号疑惑のように、正しい知識の欠如のせいで足をすくわれることは多いのだ。
 無論、1人の人間があらゆる分野の知識に精通するのは不可能である、だが、知識がなければないで、正しい知識を検索してみればいいだけのことだ。そのためのインターネットだろう。スペースシャトルや国際宇宙ステーションの船外活動の映像なんて、検索すればいくらでもヒットする。正しい知識を書いたサイトも見つかる。
「捏造だ」と騒いだ連中は、その程度の労力しかかけなかった人間――自分の「常識」や主観的印象に絶大な自信を持ち、知識を得ることをうとんじるタイプの人間である。こういう人間はおそらく、これから何度でも騙されるだろう。】


参考リンク(1):中国の「神舟7号」の船外活動の映像の中に・・・泡が?(ニコニコ動画)


参考リンク(2):神舟7号における、船外活動の画像に関するFAQ(よくある質問と答え)Ver.1.1(2008年10月16日木曜日版)

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 患者さんに薬を処方しようとすると、「薬は副作用があるから、飲みたくない」と言われることがけっこうあります。
 嫌がっている人の口をこじ開けて内服していただくわけにもいかないので、とりあえず説得するのですが、必ずしもうまくいくとは限りません。


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03月26日(木)
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