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活字中毒R。
by じっぽ
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■「新宿駅最後の小さな飲食店」の「困ったお客様」への接客術
『新宿駅最後の小さなお店ベルク』(井野朋也著・P-Vine BOOks)より。
(「都心の超ど真ん中(新宿駅東口改札から徒歩15秒)にある15坪の個人店『ベルク』」の店長・井野さんが『ベルク』の歴史や店のこだわりを書かれた本の一部です)
【経営者が現場の最前線に立って店をまわすことを、私たちは「現場主義」と呼んでいますが、それにはプラス面とマイナス面とがあります。両面があるというより、経営者によって、うまくもいけば裏目にも出るということですね。私自身、現場をアルバイトにまかせた方がいいと思うことがあります。
バイトスタッフは、余計なことを考えないので、わりきって働いてさえもらえれば、かえって経営者よりいい接客をするからです。
例えば4人席と1人客が陣取っているのを見ると、経営者はそのお客様をつい別の席に移動したくなります。それをマニュアル化して、スタッフにやらせているところもあります。確かに席を空けておいた方が、団体客が来たときに案内しやすい。でも、その1人客が帰るまでに団体客がくるとは限りません。経営者は席にしろ何にしろ、店そのものが自分の商売道具という意識が強いので、愛情はあるのでしょうが、思惑と違った使われ方をされるのが許せないのです。相手がお客様であっても、つい手を出したくなる。
しかし、それでは経営者が現場にいても、いることにはなりません。なぜなら、現場とは接客だからです。接客をしないで店をまわす経営者は、むしろ現場を邪魔することになります。裏目に出るとは、そういうことですね。
「接客をしないで店をまわす」とはどういうことかというと、経営者の思惑(効率)優先で動くこと、そして同じことですが、面倒事を想定して事前に回避しようとすることです。
4人客がくるのを想定して1人客をあらかじめ4人席から移動しておけば、4人客がきてから移動するよりスムーズです。しかし、そこで無視されているのは、いま店にいるお客様の気持ちですね。4人客が実際にきて移動させられるなら、まだそのお客様も納得がいくでしょう。
しかし、いま店にいる自分のためでなく、くるかどうかわからない誰かのために席を移動させられるのは、なんとなく不当な扱いを受けた感じがします。だから店によっては、予約席と表示して、最初から4人席に1人客を座らせないようにするところもあります。ただレストランならまだしも、うちのような大衆店がそんなことをしても、嫌味でしかありません。
いずれにしても接客は、目の前のお客様を気持ちよく受け入れることがすべてといってもいい。席は、一時でもお客様のものです。店が混んで座れないお客様がいらっしゃったら、はじめてそのお客様の代わりにほかのお客様にご協力を願う。死んだ席をよみがえらせる。それがいわば店の役目であり、接客ですね。
店の状況は、どんどん変わります。その度に頭を切り替えて、お客様第一に動くのが店における「現場主義」です。要するに、臨機応変な対応ですが、現場(接客)から離れると、その感覚が次第に失われるのです。だんだん管理しようとするようになります。管理とは、まさに「面倒事を想定して、事前に回避しようとすること」ですね。接客とは相反するものです。
お客様に恥をかかせない。それも接客における心得の一つといえます。例えば、よそから持ち込んだ飲食物を店内で召し上がっているお客様に、どう対応するか?
「お持込みお断り」と貼り紙をしている店もあります。気持ちはわかります。経営者の立場からすると、飲食店で「持ち込み」が認められてしまったら、すなわち経営の危機を意味しますから。現場感覚でいっても、外の自動販売機で買った缶コーヒーを席で飲まれたら、何のために一杯のコーヒーに全神経を注いでいるのかわかりません。店にとって「持ち込み」はトップクラスの迷惑行為です。
ただ、私は「お断り」とか「ご遠慮」という否定的な表示をするのはなえるべく避けたいのです。表示は不特定多数の方に向けられるからです。
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09月28日(日)
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