ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「十人のうち九人まで汚職している環境で一人だけ清潔なら、どうなると思う?」
『北京大学てなもんや留学記』(谷崎光著・文春文庫)より。

(中国の名門中の名門・北京大学での留学体験記の一部です。中国人学生たちの「賄賂」についての考えかた)

【学内だけではなく、学校周辺の小さな店に行くのも楽しい。こういう店には中国人学生に連れていってもらった。
 北大(この文章での「北大」=「北京大学」です)西門近くの手羽焼き屋さんは週末の夜は真夜中までやっていて、炭火がぱちぱちとはぜ、そこに上からスパイスをふりかけると、パッと赤く燃えあがる。夏は校内の外れに屋台も並ぶ。試験が終わると飲んだくれるのは、どこの国の学生も変わらない。
 官僚になる人も多いこの学校では、卒業後の切実な問題は「汚職にかかわるか否か」。
「どうするんだ、公務員試験受ける?」
「だけどなったら非貪不可(フエイタンブク・汚職しないわけにはいかない――「非〜不可」の構文が一発で記憶できるいい例文です)だしなぁ。危険だ」
「やらないほうが危険だ」
 授業中、先生が中国人の学生たちに
「君たちが故郷に帰って知事などと話すときに……」
 というのを聞いて、この子たちは地元に帰るとそういうクラスなんだなーと思ったが、だからこそ、汚職はさらに深刻なのである。
 日本と違い、十人のうち九人まで汚職している環境で一人だけ清潔ならどうなるか。もちろん九人から陥れられる。
 小学校入学から前のほうのいい席はお金で買う。大学入試共通試験の点数も1点1万元で買える。日常生活で賄賂を見慣れた彼らにとっては、汚職は良い悪いというよりもはや生活に密着している問題。生きるためには汚れなければならぬ。日本だって官僚汚職はひどいが、少なくとも日常生活で役人に賄賂は要求されない。
 中国の街中でよく見かける「運転免許手続き所」はたいてい管轄の職員の親族がやっていて、つまり「金出せば順番飛ばしてあげるよー、免許を売ってるよー」である。
 まあこのぐらいを汚職と思う中国人はいないだろう。中国人の知人が免許を持っていれば、「買った? 取った?」と聞いて、誰も変に思わない。
 五道口あたりの小店でもよく公安がつかつかと入ってくる。店の商品を勝手に飲み食いし、当然のごとくお金を払わず出て行く。老板いわく、
「あいつらは自分の給料が安いから、悪いとおもってないんだ」
 正直、賄賂をまったく拒否すれば、子供は学校に行けず、行っても不当な成績を与えられたり、引越しの登記もできず小さな店さえ開けないということになる。
 現代中国にちょっと深くかかわった人は、おおむね、「なぜこんなに簡単に息をするように嘘をつく、人を騙す。良心はないのかー」と叫ぶことになる。
 私もそう思っていたが、あるときふと気づいた。
 この人たちは子供の頃から騙され続けているんだ。それも一番ひどいのは自分の国。メディアに流れる反吐がでそうな美しい言葉と、現実との極端な乖離の中で育ってきているのである。そりゃ、まねするでしょう、親とたとえられた国家の。

(中略)

 北京大学東門近くの胡同の中にある、おっそろしく汚い学生バー。ジュースか酒かわからない甘ったるい液体を舐めていると、話が政府の腐敗になった。
「でもどうしてそこまで公務員が腐敗するの? みんなやるから?」
「違う。権限が大きいからだ。なんでも決められる、なんでもできる。集中しすぎている。誰も彼らを管理できない」
 紀宮様と結婚された東京都庁勤務の黒田さん。たとえば彼が腐敗とは生涯まったく縁がないと言っても、そんな「夢物語」を信じる大陸の中国人はそういない。都庁の職員というだけで最低マンション20室ぐらいは持っていると思うだろう。いや皇室と縁戚なら20棟か。
 別の学生が言う。
「国が腐敗を推進している。賄賂がないと生活できない」
「なに、それ?」
「公務員の給料が安いんだよ。僕の兄ちゃんは広西で公務員を1年で辞めた。手当てを全部入れて、給料は一ヶ月529元(約8000円)。飯も服も家も全部親もちだ。彼女に飯も奢れないし、結婚もできない」

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07月27日(日)
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