ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「イギリスのユーモアの特徴は何だ?」
『誰だってズルしたい!』(東海林さだお著・文春文庫)より。
(巻末の東海林さだおさんと土屋賢二さんの特別対談「ユーモアはいじましい。」の一部です)
【東海林さだお:人を笑わせるような人はあんまり評価されない、(銀行などが)お金も貸してくれないというのは、日本のユーモアに対する評価ですね。イギリスなんかだと違う。
土屋賢二:イギリスは、特に政治家がみんなユーモアがあるんですよね。ユーモアのセンスが人間の最低条件みたいな大事なポイントになってますね。
東海林:日本では大事どころかマイナスポイントになる。ふざけた奴だとか誠実じゃないとか。
土屋:真面目さとか誠実さとユーモアのセンスは、相反するものじゃないんですけどね。たとえば、東海林さんが面白いことを書くからといって、誠実でも真面目でもないとは言えない。でも、誠実で真面目だとも言えない(笑)。
東海林:軽い奴だって評価はあるよ。
土屋:僕はそれも間違ってると思うんです。人間がどういうものを笑うかを考えると、テレビのコント見てても、病気とか失恋とか葬式とか、ものすごく大きい不幸があったり、耐えがたい出来事があったときを舞台にして笑ったりしますよね。ですから、深刻な部分を笑い飛ばそうとする人じゃないかと思う。
東海林:深刻な事態に負けない。
土屋:イギリスなんかでは、そういう能力が非常に尊重されているんですよ。第二次世界大戦中にヒトラーが英仏海峡を封鎖したときも、イギリスの新聞は見出しに「ヨーロッパ大陸が孤立した」と書いたんです。孤立したのはイギリスなんですけど(笑)。
東海林:へえ。
土屋:それ読んで、読者は笑わないだろうけど、そういう深刻な事態になっても屈しないよということを示してるんだろうと思う。
東海林:余裕があるよって。
土屋:そうそう。ユーモアのある人は、重大な事態に立ち至っても余裕がある人という評価になるわけですね。
東海林:日本なんか重大な事態のときにユーモアを発揮した政治家っていないでしょ?
土屋:ほとんどいないですね。僕はよく知らないですけど。
東海林:僕も知らないけど。
土屋:知らない同士で言うと、いないですね(笑)。
東海林:ゼロね。それ、恐いんです。
土屋:イギリスだと、ブレア首相みたいなおかしいこと言いそうもない顔した人でも、首相就任後の初めての選挙のとき「イギリスが抱えている問題は3つある。教育と教育と教育だ」と言ったりしますからね(笑)。
東海林:イギリスにそういうユーモアが生まれたのは、どういう土壌なんですか。
土屋:よくわからないです。ただ僕がイギリスで感じたのは、みんな、やっぱり強い人間を尊敬するみたいです。
東海林:チャーチルみたいな?
土屋:ええ。肉体的にだけじゃなくて、精神的にも強い人。どんな不幸な事態に立ち至っても挫けない人間。ですから、よく『007』で死ぬ間際にジョークを飛ばしたりしますよね。
東海林:はい。
土屋:で、いろんな人に「イギリスのユーモアの特徴は何だ?」と訊いたら「自分を笑う能力だ」って。日本だったら、政治家が悪口言われて名誉毀損で訴えたりするようなケースでも、イギリスでは言われた本人が笑ったりする。そう振る舞うぐらいの余裕のある人間じゃないと、軽蔑されてしまうんです。】
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僕はこれを読みながら、「そういえば、ドリフのコントって、けっこう『深刻な事態』をネタにしたものが多かったよなあ」なんて考えていました。定番の「お葬式ネタ」なんて、かなり「不謹慎」ではありますよね。
しかしながら、そういうシチュエーションだからこそ、「笑い」というのは生まれやすいという面もあるのでしょう。
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12月03日(月)
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