ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「キレる大人」として生きるということ
『週刊SPA!2007.10/30号』(扶桑社)の鴻上尚史さんのコラム「ドン・キホーテのピアス・639」より。
【仙台にワークショップに行ったのですが、帰り、東北新幹線の中で、隣に座ったサラリーマンの人が、ワゴンを押してきたお姉さんに、「××、1個ちょうだい」と声をかけました。「××」は、よく聞き取れなかったのですが、たぶん、沿線の銘菓だと思います。
お姉さんは、「はい、××、1個でよろしいですか?」とおうむ返しに言いました。その途端、「1個って、言ったじゃないか!話をちゃんと聞けよ!バカかお前は!」と、そのサラリーマンの人は叫びました。
僕はびっくりして、体がびくんとしました。お姉さんは、「すみませんでした」とすぐに答えて、「あいにく××は、今、切らしておりまして、後でお届けします」と答えました。サラリーマンの人は、「あ、そう」とだけ返しました。
僕は、ちらりとサラリーマンの顔を見ました。普通の中年の男性でした。特に、そのスジの人でもなく、亀田のトレーナーお父さんのようなケンカ好きな顔でもなく、じつに普通の人でした。
あのお姉さんは、ストレス溜まっただろうなあ、どこかで吐き出すのかなあと、僕は心配しました。
それにしても、普通の人が、突然、「キレる」瞬間に立ち会うと、ドキドキするもんです。
朝日新聞で、「キレる大人たち」という特集をしていました。
それには、「暴行犯行時の年齢別検挙人員の推移」という警察庁の統計が引用されていました。
”警察庁によると、暴行の動機は各年代とも「憤怒」、いわゆる「キレ」が最も多く、8割前後を占める傾向に変わりはない。しかし、1998年から2006年までの推移をみると、10代がほぼ横ばいなのに20代以上は軒並み増加。60代以上は約10倍、30代と50代が約5倍と大幅に増加し、実数でも中高年の増加が目立つ。”
と解説されています。
統計グラフでは、ダントツの1位が検挙数5000人の30代、次に20代、50代、40代とほぼ同じ数が続き、なんと10代は最低の水準、30代の3分の1以下の1500人ほどなのです。
んで、記事に登場するメンタルヘルスの専門家は、「今の職場はかなり抑圧され、一種のあきらめムードが漂っている感じがする」と指摘し、「職場で溜めた不満を、地域や公共の場で爆発させているのではないか」と、不満の対象と怒りをぶつける対象とのズレを特徴にあげています。
新幹線のサラリーマンがキレた時に言った「話をちゃんと聞けよ!バカかお前は!」という言葉は、じつは、僕は聞きながら、「この言葉はとてもスムーズだ」と感じました。つまり、何回も言い慣れている言葉だと思ったのです。】
〜〜〜〜〜〜〜
現在30代半ばの僕にとっては、まさに「他人事ではない話」なのですけど、確かにこういう人、ときどき目にすることがあるのです。
鴻上さんの話では、「新幹線の車内販売の女性」が「キレられる対象」になっていますが、少なくとも、この文章を読んだ限りでは、この販売員は「ごく普通の対応」をしているようにしか思えません。こういう「注文の復唱」というのはごく一般的なものですし、それでいちいちキレていたら、ファミレスに入ったら毎回「ちゃぶ台返し」をやらなくてはならないはず。
この「サラリーマン風の中年男性」の「キレっぷり」は、言いがかりというか、何かに対するやつあたりのようにしかみえないのですが、本人は、いったいどういう気持ちで「キレて」いるのでしょうか?
こういう人って、本人は「接客のやり方を教えてやったんだ!」とか自分では考えているのかなあ。
それとも、「さっきはなんであんなことでキレちゃったんだろう……どうしたんだ俺……」と、内心後悔しているのでしょうか?
でも、僕がこのコラムを読んで感じたのは、「世の中には酷い人がいるものだなあ、許せん!」というような「憤り」ではなくて、「この例はさすがに酷いけど、僕も最近、ちょっとしたことでキレるようになってしまっているんだよなあ……」という「自分もこうなってしまうのではないか?」という「恐怖」だったのです。
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11月05日(月)
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