ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
[10025221hit]
■『JTB時刻表』を支える「鉄道オタク魂」
『そこまでやるか!〜あなたの隣のスゴイヤツ列伝』(日本経済新聞社編・日経ビジネス文庫)より。
(「隣のスゴイ鉄ちゃん〜推定400万個の数字の細密画を編み続けて20年」というタイトルのJTB時刻表編集長・木村嘉男さん(49歳)を紹介した記事の一部です)
【全国の列車ダイヤを網羅したJTB時刻表は大正14年(1925年)の創刊。実は定期刊行物として文芸春秋と並ぶ歴史を持つ雑誌だ。
鉄道文化の伝統を継ぐ編集長、木村嘉男の仕事は細密画の絵師に通じるものがあるようだ。一冊に盛り込まれる数字は推定400万個。しかも、ただ詰め込むのでなくわかりやすくしなければならない。米粒に絵を描くような根気が必要なのだ。
出来上がった時刻表からは想像もつかないが、JR各社から発表されるダイヤの”原稿”は表記がバラバラで、手書きのものすらある。乗り継ぎの便まで考え、特急と普通を並べた完成形とは程遠いバラバラの状態で手元に来る。特急、普通列車が1本ずつ別々の紙に書かれていることもある。こうなってくるともう、意地悪なパズルのようなもので、大改正時にはもちろん泊まり込みの作業となる。旧国鉄が監修していた20年前は、国鉄の営業戦略会議が開かれる伊豆の旅館で合同合宿をしたほどだ。
そこで自他共に認める鉄ちゃん(鉄道オタク)の知識が生きる。特急から鈍行まで列車の速度はまちまち。そんな列車をどういう順番で並べていくかで、乗り換えが可能かどうかなど見やすさ、使いやすさが決まる。列車の配列の妙が時刻表の競争力を決める。
もちろん全国主要駅の構造は頭の中にたたき込んである。「この『ひかり』からこの『こだま』へは乗り換え時間が3分あってもムリ。駅の端と端のホームだから」。こんな計算ができるコンピューターソフトはない。
デジタルな数字を編む作業は、どこまでもアナログなのである。
国鉄の分割民営化などでダイヤは複雑になった。創刊当初の200ページ強が現在1200ページ。増ページで済ませるなら話は簡単なのだが、問題は重量制限だ。時刻表は「第三種郵便物」の指定を受け、割安で運んでもらっている。その代わり一冊1kg以内に収めなければならない。
ダイヤの大改正時、本の上下と右側を1〜2ミリずつカットし、やっと減量が間に合った。めざとい鉄道ファンが「ちょっと小さいようだが」と問い合わせてきて、ドキッとしたことがある。鉄ちゃんたちの眼は鋭い。
「電車が3分遅れれば事故かと思う」という、世界に類を見ない正確さを求める日本人の国民性。編集者は極度の緊張を強いられ、かつて急行の停車駅が一段ずれたまま出版されたときは、止まるはずのない隣の駅で列車を待つ乗客の姿が夢に出た。
(中略)
鉄道大陸、欧州は「トーマス・クック」という世界に冠たる定番時刻表を持つ。しかし、それにも負けないのが入線時刻(列車がホームに入る時間)やホームまで記す日本の時刻表の細やかさ。世界屈指の親切さを誇る時刻表は歴代編集者の創意と、膨大なオタク的知識の産物だ。
大学時代に始めた国鉄走破計画。日本地図になぞった朱色の線は2万キロを超え、2004年春、日本最南端路線の終点、鹿児島・枕崎駅でゴールインとなった。
2006年春。足かけ7年にわたった編集長生活に別れを告げた。けれども線路は続く、どこまでも。編集長として最後となった2006年5月号の「編集後記」にこう書いた。
「時刻表はこれからも進化するものと信じております」】
〜〜〜〜〜〜〜
僕は「鉄ちゃん」ではないんですが、それでも、この記事を読むと「JTB時刻表をつくっている人々」に対して敬意を抱かずにはいられません。「時刻表」って、あまり鉄道に興味がない人間にとっては眺めているだけで目がクラクラするような数字の洪水でしかないのですけど、あれをつくるために日夜努力している人たちがいるのです。
[5]続きを読む
05月21日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る