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活字中毒R。
by じっぽ
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■漱石と鴎外と太宰と藤村の「著作権ビジネス」
「週刊SPA!2007.2/6号」(扶桑社)の「文壇アウトローズの世相放談・坪内祐三&福田和也『これでいいのだ!』」第226回より。
【坪内祐三:著作権ってさ、文芸・音楽・美術は作者が死んだあと50年間有効でしょ。それを今、日本文芸家協会が、三田誠広('77年に芥川賞を受賞した小説家)を中心に70年間に延長しようと運動してて、反対派とモメたりしてるんだよ。
福田和也:勇気あるよね〜。自分の作品が死後に残ると思ってるんだね。
坪内:思ってるんだね。
福田:三田さん、今、著作権を放棄してもなんの実害もないでしょ。
坪内:それがさ、著作権の保護期間を70年間に延ばすべきだって人たちの主張が、スゴイ奇妙な論理なんだよ。それこそ、金井恵美子も『一冊の本』で批判してたけど。なんかさ、「若くして著者が死んだときに、残された妻子の生活が……」って言うわけ。だけど、親が死んだときに子供が0歳だったとしても、死後50年で50歳だよ。50歳にもなって親父の著作権料で生活するなんて、そんなニート、オレは許さないよ。
(中略)
坪内:むしろオレは、著作権を死後30年までに減らせっていう運動をしたいね。ていうのもさ、今、著作権が死後50年まで有効になっちゃってるから、「全集」とか「アンソロジー」の編纂がやりにくいんだよ。遺族を探して交渉して印税を払って、となると、確実に売れる全集しか出版社が手を出さない。
福田:著作権なんて出版後5年で消えていいから、税金マケてくれ、とかね。
(中略)
坪内:だから……なぜなんだろう、なぜ文芸も保護期間を70年に延長したいんだろう。だって今現役で書いている人で、死後50年経って作品が残るって人はほとんどいないと思うよ。でも、読みたいと思っている人がかろうじて残ってるときに、「よし全集を作ろう」ってなっても、著作権が生きてるから簡単には作れない。そのうえ70年にしたら、権利が延びた20年の間に忘れられちゃうパターンもあるから。自分の作品を後世に残したいなら、どんどん著作権を減らしたほうがいいんだよ。そう思うと、誰のための延長論なんだろうね。
福田:不明ですよね。
坪内:日本の場合、伝統的に著作権の運用がイイカゲンだから。一番有名なのは尾崎紅葉ね。尾崎紅葉はいつも春陽堂って出版社で本を出してたんだけど、春陽堂って「印税」じゃなくて「買い取り」、つまり原稿料を1回払っておしまいのシステムだったの。『金色夜叉』みたいにスゲー売れた本でもほとんどお金になんなくて、それで明治36年に死んじゃうから、未亡人がホントにカツカツの貧窮生活になっちゃうのね。
福田:死後の円本(全集)の印税も入らないわけ?
坪内:そう。原稿の権利丸ごと買い取りだから、円本でも印税が入らない。
福田:それはヒドイね。
坪内:で、昭和18年に菊池寛が、「それはヒドイだろう」っていうんで、作家仲間から義援金を集めたんだよ。
福田:菊池寛が。
坪内:一方で賢いのが、当時から印税ってことをちゃんと考えてた森鴎外と夏目漱石と幸田露伴。この3人は、買い取りが常識だった当時でも印税制なんだよね。ただ露伴の場合は、売れないから買い取りより安くなっちゃった。漱石はね、増刷ごとに印税率を上げてるの。漱石はやっぱりそのへんもスゴイよ。
福田:印税を考えないで、自分で出版しちゃったのが島崎藤村ね。
坪内:藤村は、自分で出版社つくったんだんだよ。それで儲けるんだよね。『破戒』も自費出版でしょ。それから新潮社に高く売るんだね。それぐらいさ、当時の作家ってそれぞれインディーズでやってたんだよ。
福田:自分の了見と工夫でね。
坪内:うんうん。今の作家って、いろいろ守られてるうえで、さらに著作権50年を70年になんて、冗談じゃないって感じだよ。
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03月06日(火)
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