ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■『このミステリーがすごい!』の歴史的変遷
「このミステリーがすごい!2007年版」(宝島社)より。

(「このミステリーがすごい!」の19年間の歴史のなかで、もっとも多くの作品(13作品)がランキング入りしている、大沢在昌さんのインタビュー記事の一部です。構成・文は友清哲さん)

【インタビュアー:今年で作家生活28年目という大ベテランの大沢さんですが、その間の文芸シーンの変遷について、どのような印象をおもちですか?

大沢在昌:それは逆にこちらが訊きたいというのが本音かも。なにしろ我々作家の側は、「『このミス』に載っていて、『このミス』より売れる本はない」と皮肉を言って笑っていたものですから(笑)。

インタビュアー:確かにおかげさまで、毎冬『このミス』フェアを書店さんが組んでくださったり、媒体として得難い知名度をもつに至ったとスタッフ一同感謝しています。

大沢:ある編集者は「『このミス』で1位を獲ることは、文学賞をひとつもらうのと同じくらいの効果がある」と言ってました。実際、あまり知名度のない文学賞を獲るよりも、『このミス』で1位になるほうが間違いなく本は売れると思うんですよ。そういう意味ではミステリーが隆盛を迎えるまでの推進力の中で、『このミス』の存在は大きかったと思う。文学賞の場合は候補になるかどうかという点に運・不運もありますが、『このミス』に関してはそれなりの仕事をすればランキングに入れるし、それがまた本の売り上げとして作家に還元されるという”貢献”があったと思うんですよ。

インタビュアー:作家のかたにそのように認識していただけるのは、本当に嬉しいことです。

大沢:僕の『新宿鮫』にしても、1位になったことでやはり売り上げに大きく貢献してもらったと思ってますから。この作品ではその翌年に賞もいくつかいただいているんですけど、『このミス』がいちばん大きな勲章だったかもしれません。じつは『新宿鮫』には、オビが7種類くらいあるんです。”○○賞受賞作”などと謳ったもので、最初は小さく「『このミステリーがすごい!』第1位」と添えてある程度だったのを、これは逆だろうと、『このミス』の記載のほうを大きくしたバージョンを別にまた作ったりして。『このミス』でトップになったことで大沢在昌がブレイクしたというのは、間違いないと断言できますね。

インタビュアー:大沢さんのキャリアと時を同じくして成長してきた媒体ですから、とても光栄に思います。

大沢:ただ、厳しいことを言わせてもらえば、1位になったすべての作品がブレイクしているかというと、必ずしもそうではないでしょう? 『新宿鮫』のころにはまだ、1位ということであれば無条件に手に取ってもらえるような空気が読者側にあったと思うんです。もちろん、1位になった作品をブレイクさせなければならない縛りが宝島社にあるわけではないけど、1位を獲った作品でも吟味する冷静さが今の読者にはあるのかな、と。

インタビュアー:なるほど。出版点数の増加や国産ミステリーの多様化なども無関係ではないかもしれませんね。

大沢:結局こうしたランキングというのは、すでに1位を獲った経験があったり、作家として相当な認知度をもっている人にとっては、ハンディ戦のようなところがあると思うんですよ。たとえば投票者の間で「今さら宮部みゆきじゃないだろう」という空気があったとしても、それでもやはり『模倣犯』だったら推さざるを得ない、これはまさに横綱相撲です。僕の『新宿鮫』のときはそういうハンディがまだ皆無で、むしろ大沢在昌が頑張ったからここはこいつを推しとこうや、という空気で1位にしてもらった面もあったと思う。】

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12月25日(月)
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