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活字中毒R。
by じっぽ
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■ネット上の「みんなの意見」は正しいのか?
「週刊アスキー・2006.10/24号」の連載コラム「仮想報道 Vol.454〜『みんなの意見は案外正しい』というのはほんとうか?」(歌田明弘・著)より。

【ネットの役割が大きくなればなるほど、みんなの意見が正しいかどうかが重要になってくる。ショッピングサイト内などでは、利用者の感想を見て購入することが多くなってきたし、政治や経済の話もブログの意見を参考にしたりする。あるいは『教えて!goo』やカカクコム、メーカーサイトのフォーラムなどでは、利用者どうしが教えあう。
 金融関係のコラムニストのスロウィッキーが書いた『「みんなの意見」は案外正しい』の邦訳の帯には、梅田望夫さんの話題の本『ウェブ進化論』の一節が引用されている。「『次の10年』は『群集の叡知』というスロウィッキー仮説を巡ってネット上での試行錯誤が活発に行われる時代と言ってもいい」。たしかにネットは、「みんなの意見は案外正しい」かどうかの一大実験場と言える。この問題は、ネットの根幹にかかわる重大な問いになってきたし、今後ますますそうなっていくだろう。
 スロウィッキーの本では、見本市にやってきた雑多な人々が予測した牛の体重は、平均するときわめて正確だった、といった話に始まって、少数の専門家などよりも”みんな”が正しかった例がこれでもかとばかりに並び、次のように主張している。
「正しい状況下では、集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中でいちばん優秀な個人の知力よりも優れている。優れた集団であるためには特別に優秀な個人がリーダーである必要はない。集団のメンバーの大半があまりものを知らなくても合理的でなくても、集団として賢い判断を下せる」
 こうした主張は、少し前にこの欄で取り上げた企業の人事問題にも、おもしろい視点を投げかける。スロウィッキー仮説にしたがえば、有能でないと見なした人々を早期退職に追いやったり非正社員化するのは間違い、ということになる。「優秀な意思決定者とそれほど優秀ではない意思決定者が混在している集団のほうが、優秀な意思決定者だけからなる集団よりもかならずと言っていいくらい、よい結果を出している」からだ。
 こうした理屈からすると、映画『釣りバカ日誌』で、西田敏行扮する釣りしか能力のないダメ社員をかばい続ける社長は、社員の多様性を維持するための合理的な行動をとっている、ということになるかもしれない。
 エリート集団や専門家集団がなぜ間違いをおかすかというと、特定の分野について優れているに過ぎないにもかかわらず、他の分野についても過信しがちだからだとスロウィッキーは言う。さらに均質な集団は、多様な集団よりまとまっており、まとまっている分だけメンバーに対する圧力が強い。外部の意見や異論を排除し、自分たちは絶対正しいという幻想を持ちがちだ。そのことが間違いを引き起こすとのことだ。
 均質で、成員に対する圧力が強いと間違えるということならば、均質社会といわれる日本は間違える可能性が高い、ということになってくる。

『ウェブ進化論』でも、スロウィッキーの仮説を紹介しながら、ネット百科の『ウィキペディア』や『ミクシィ』、ソーシャルブックマークなど”群集の叡知”を集めたサイトをあげている。スロウィッキーも、”みんな”が張ったリンクによって、検索精度を高めたグーグルの例などをあげているし、ネットについても「みんなの意見は案外正しい」と言いたいようだ。ところが、この本の主張とネットの発展方向をあわせて考えてみると、まったく正反対の結論が導き出されるように思われる。
 スロウィッキーは、「みんなの意見は案外正しい」例をたくさんあげているが、やろうと思えば、みんなの意見が正しくなかった例も、同じぐらい並べることができるはずだ。重要なのは、どういう条件であれば「みんなの意見は案外正しい」のかをはっきりさせることだろう。

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11月23日(木)
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