ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「オーディオ・ブック」を自主制作する作家たち
『ダ・ヴィンチ』2006年9月号(メディアファクトリー)のコラム「海外出版レポートNeo」(文・荒元良一)より。

(アメリカの作家のさまざまなプロモーション活動を紹介している文章の一部です)

【今回、(NYタイムス電子版の)記事で取り上げられたのは、オーディオ・ブックという媒体である。その名が示すように、本で記される言葉を朗読するタイプのもので、車社会のアメリカでは、通勤時の車の中で聞いたりと日本以上に需要が多い。オーディオ・ブックの主流は、近年まではカセット・テープだったはずだが、やはりというべきか、ここへ来てネット上にアップし、購入者がダウンロードするものも出てきた。
 さて、問題はここからである。オーディオ・ブックにすると、確かに新しい読者を開拓できる可能性が生じるのだが、語り手やエンジニアを雇ったり、録音スタジオをおさえると当然コストがかかる。おまけに、語り手が複数になった場合や、有名な俳優を起用すればさらに費用はかさむから、どうしても出版社側は二の足を踏む傾向にある。
 しかし、だからといって、作家の中には、出版社が重い腰をあげてくれるまで、手をこまねいて待てない人間もいる。このあたりが強気というか、積極的というか、アメリカ人の気質がよく出ているのだが、気概のある作家が、オーディオ・ブックの自主制作に乗り出す傾向があるらしい。
 たとえば、記事で紹介される作家のひとり、ジュリアン・ルービンスタインは、ハンガリーのアイスホッケー選手が銀行強盗に変貌したノンフィクション『Ballad of the Whiskey Robber』(これが実話というのも凄みがある)を書き上げ、さらに読者を増やそうとオーディオ・ブック化の話を、本を出版したリトル・ブラウン社へ持ちかけた。しかし、本の実売数が1万5000冊そこそこの状況では、制作費を捻出するのは厳しいと断られる。
 ならばと一念発起した著者は、友人でもある録音技術者に頼み、出演者には主人公である元アイスホッケー選手本人(監獄からの出演)、旧知の作家仲間や俳優、ミュージシャン等からのサポートを得て、ついにオーディオ・ブックを完成。その熱意に動かされ、ついに出版社もネットでの販売に至ったという。
 他の作品としては、サラ・ヴォウェル著の『Assassination Vacation』でスティーヴン・キングが同じように声の友情出演し、人気TV番組『セックス&ザ・シティ』でレギュラーだった俳優のマリオ・キャントーンが参加する『Rococo』(アドリアーナ・トリジアーニ著)など、オーディオ・ブックが話題に上ることは少なくない。しかしながら、出演者や技術者のほとんどがボランティアであるのを考慮すると、まだ採算性があるとは言い難い。記事が示すように、作家がコンピューターを駆使し、録音、編集はもとより、肉声も「作る」時代がいずれ到来することになるのだろうか。】

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 アメリカの作家の多くは、新刊を出すと朗読会やサイン会という形式で、あの広いアメリカ国内を巡ってプロモーション活動を行うのだそうです。まあ、日本でも大手書店でのサイン会というのは、かなり頻繁に行われているのですけど。
 そして、アメリカの「スターダムの域に達していない作家」たちは、自費でプロモーションのために地方まわりをすることもあるのだとか。アメリカでは、作家として生きていくのもかなり外向的でなければ難しいのだなあ、と感心してしまいました。しかし、そんなに売れていない作家だったら、地方まわりをしてもそんなにプロモーション効果そのものがあるのかどうか、疑問にも思えるのですけど。かなりのお金をかけて、閑散としたサイン会場に辿り着いたとしたら、すごくショックですよね……
 映画化されて話題になっている、トルーマン・カポーティの伝記を読んでみても、確かに、良くも悪くも「タフ」でないとアメリカで作家をやっていくのは難しいのでしょう。


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09月07日(木)
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