ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■いじめられていた「ドラえもん」
「ぼく、ドラえもんでした。」(大山のぶ代著・小学館)より。
【そののぶ代ちゃんが中学へ入って初めて、ああ人生って厳しいものだ……、つらいものだ……と思えることにぶつかりました。
ご存知のように、中学はいろいろな学校から集まってきたお友だちが、新しいクラスで一緒にお勉強します。
背の高いカッコいい男の子がいたので、私はその子のお友だちになりたくて、
「ねえ、私、大山のぶ代っていうの。あなた、名前なんていうの?」
「えッ、大山……。お前、ヘンな声だなー」
”ムッ。な、なにさ、ちょっとカッコいいと思って、返事もしないで人のこと、ヘンな声だなんて”私はその子とはもう、口もききませんでした。
その後、私はそんなことはすっかり忘れて、学校が楽しく、毎日元気に通っていました。ところがある日、ふっと気がつくと、なんだかクラスの中で、変な遊びが始まっているようなのです。朝、出席をとる先生の声に、
「ハーイッ」
と元気に答えると、クラスの中がサワサワッとするのです。
ザワザワだと先生も”静かにッ”と言います。でも先生が気がつかない程度になにか、何人かの子がサワサワッとするのです。
それが毎日だんだんはっきりしてきて、明らかに私がなにか言うたびに、何人かの男子が、お互い相手を肘でつつき合いながら、声を殺してクスクス笑うのです。英語の時間、
「アイアム、ア、ガール」
なんて声を出して読むと、
”ヒヒッ、ボーイみたいな声を出して”
とか、クスクス笑いとかが聞こえてきます。
なんとなく嫌だなーと思いながら、昼休みなどについ忘れて、大声で、
「ドッチボールしない?」
なんて言うと、すぐ3、4人の男子が私の周りを囲んで、
「おい、大山ッ。お前の声、どこかで出てるんだ」
「お前の声は、音かッ。ぶっこわれてるぞ」
「もういっぺん声出してみろーッ」
とか言って小突きます。私も負けていません。
「なにさッ、私の声のどこがおかしいのッ」
言い返しながら、ふたりくらい突き飛ばして教室に逃げて帰ります。
午後の授業でも、うっかり
「ハーイッ」
なんて手をあげて、先生に指されて、黒板の前で数学の問題なんかやると、クラスのヒソヒソ、サワサワはだんだん人数が増えてきます。
嫌だなー、嫌な遊びが流行っちゃって……、と思いながら毎日を過ごしていましたが、その人数はドンドン増えてきました。
5人くらいのいたずら坊主が始めた変な遊びが、クラス中の他の子たちにも広がって、今はクラスのほとんどが、誰かのクスクスと肘のつつき合いを真似して、私が声を出したとたん、あっという間にクラスじゅうで、サワサワ、クスクスが始まります。
本当にみんながみんな私の声をおかしい、と思っているわけではあないと思います。
ただみんながすると、それに一緒に入ってやっていないと、いつかその遊びが自分のほうへ向かってくると困るから……、なんて卑怯なヤツが、みんなの真似をして私をチラチラ見ながらお互いをつつき合っているんです。さすがの元気なのぶ代ちゃんもこれにはすっかり参ってしまいました。
だんだん無口になって、学校に行くのがつらくなってきました。でも、病気でもないのに学校を休んだりするのはズル休み、卑怯者のすることだ、と思うから、どんなにつらくても嫌でも学校だけは毎日ちゃんと行きました。】
〜〜〜〜〜〜〜
「ドラえもんの声」として、日本中から親しまれ、愛された大山さんの声には、こんな悲しい時代もあったのです。ちなみに、大山さんは、お母さんのアドバイスで、この危機を「声を出すクラブ活動に入る」ことで乗り切ったのです。そのとき、放送部に入って「放送劇」をはじめたことがきっかけで、演劇に興味を持ち、それが現在の大山さんの仕事にもつながっています。
今の僕たちの感覚でいえば、大山さんの「ドラ声」は、まさに、大山さんの「個性」であり、「大事な武器」なのですけど、「特徴的な声」というのは、少なくとも中学時代の大山さんにとっては、けっして良いことばかりではなかったんですよね。
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07月04日(火)
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