ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「西原理恵子」の幻影
「悔しいラブレター」(パチンコ必勝本2006・4月2日号、ゲッツ板谷著)より。

【「ゲッツさんのことは西原さんの漫画で知りました」
 「私はサイバラさんの漫画に出てくる板っちが大好きで、板っちことゲッツ板谷さんの本も今度読んでみようと思います」
 「ゲッツさんのエッセイには西原理恵子さんの漫画が入っているので、図書館では借りずに本屋さんで買っています」
 オレの元には、前記のような内容の電子メールや出版社経由のファンレターが多数届く。この1〜2年で西原の名前が混じっているメールや手紙の数はかなり減ったものの、それでも全体の1〜2割のメールや手紙には西原の名前が入っている。で、そういう一文を目にする度に(やっぱし、サイバラのねーさんには足を向けて寝られねえんだなぁ……)といった悔しさも正直感じるのである。
 もう何度も書いていることだが、オレと西原は美大受験のための予備校で知り合い、その後、漫画家になった彼女の後押しがあってオレはライターになった。そして、超売れっ子の漫画家になった西原は、10年近くにも渡って事あるごとにオレのことを各出版社に売り込み続けてくれ、何とかオレが文章で飯が食えるようになっても、さらにオレの本が売れるようにと毎回その表紙のイラストや本文中の漫画を描いてくれたのである。
 そう、オレが出版社に足を突っ込んでからは友だちという関係を超越し、姉というか義理の母というか、とにかくそんな感じの存在としてオレのことを応援し続けてくれたのだ。が、皮肉なことに情が深いサイバラは、その情を受ける身内や友だちにとって、時として「薬」ではなく「毒」になってしまうのである。オレは今までに、サイバラからの強力な援護を受け続けることによって”勘違いの人”になったり、ただ甘えることだけを覚えたり、男芸者のよういに立ち回るようになったりして、結局は表現者としても人間としても腑抜けになってしまった者を何人も見てきた。そして、その度に自分はそうなりたくないと思い、考えた挙げ句に出てきた結論は”西原に対しては感謝をしつつも一生ファイティングポーズを取り続ける”ということだった。つまり、彼女の強大な才能や母性愛には決して飲み込まれずに、いつかきっと西原の漫画より面白くて多くの人を惹きつけるような文章を書いてやろうと心に誓ったのである。

(中略:それからゲッツさんは、少しずつ”西原抜き”の本を出したりしながら、作家としての評価を高めていきます。しかしながら、西原さんは「毎日かあさん」「上京ものがたり」で手塚治虫文化賞短編賞を受賞したりと、さらに幅広く評価されていったので。
 そして、ゲッツさんは、ギャグを捨てて初の自伝的小説である『ワルボロ』を上梓されたのですが、その矢先に、西原さんがある出来事をキッカケに軽い鬱状態になっていることを知ります。ゲッツさんは、そんな状態の西原さんに送るべきか悩んだ末に『ワルボロ』を西原さんに郵送したのです。その3日後に西原さんからゲッツさんに送られてきたのが以下のFAX。

 ワルボロ、届きました。かっこいい本ですね。今日から中国にゆくので旅先でゆっくり読ませて頂きます。
 初小説、本当に本当におめでとうございます。
 これから先、たくさん仕事が増えるでしょうが、どうか断る、やめる、進めるを無理せず決めて下さい(40歳からの体と脳ミソは、おっとろしいほど弱っている事が今回の件でわかった私)。
 人のことを全く言えねーけど、断れない板谷くんが心配です。
                                                そりでは。西原理恵子

 情けない話だが、オレはこのFAXを読んで泣いた。
 やっぱり西原は、オレにとっては姉、もしくは義母のような存在なんだなぁ〜と改めて思い知らされた。完敗だった。いや、未だに同じフィールドにさえ立っていなかったのだ……。】

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04月10日(月)
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