ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「最初に文庫で出て、あとから単行本になる」
「この文庫がすごい!2005年度版」(宝島社)より。
(作家・姫野カオルコさんのインタビューの一部です。取材・文は、梅村千恵さん)
【姫野:私は、どうして本って最初に単行本になって、あとから文庫になるのかな、という疑問を常々持っているんですよ。筑摩書房のウェブ連載にも書いたことがある。「最初に文庫で出て、あとから単行本になる」というのが普通になったらいいのに、と。
インタビュアー:本というものが、すべて文庫本の形で出版されるほうがいいということですか?
姫野:すべての本というわけにはいかないでしょうが、小説や随筆などは、最初に装丁もシンプルな文庫本で、廉価で出版する。で、そういう文庫作品のなかから、とくに売れたものとか、根強い人気のものとか、読者カードによる単行本化要請度の高かったものとかを、コミックの愛蔵版のような立派な本にするほうがいいように思う。
インタビュアー:現在のスタンダードである、ハードカバーから文庫本へ、という流れを逆にするということですね?
姫野:そう。それで、ハードカバーになったら、解説はもちろん、それ以外の付加価値をたくさん付けるんです。たとえばその作品が発表された際のインタビュー記事や書評とか。ルックスがステキな作家のかたには、特別カラー著者写真などを掲載してもらってもいいでしょう。江國香織さんの着物写真とかが作品と一緒に掲載されていたら、ファンのかたはそれだけでもうれしいだろうし、京極夏彦さんの作品の愛蔵版みたいに、装丁とか書体を凝りに凝るのもいいですよね。そういう本なら、多少価格は高くてもファンの人は買うだろうし、インタビュー記事や書評付きなら資料的価値もあるからファンじゃない人も購買意欲が湧くと思うんですが……。
インタビュアー:まずは敷居を低くして、気軽に作品を手に取れるようにする、と。そして読書を楽しんで、その先は、本を買う喜び、保存する喜びが堪能できるようなものにするわけですね。
姫野:そうそう。最近の若い人は小説を読まないなんて言われているけど、それって、本というものを取り巻く仕組みがそうさせている部分も大きいんじゃないでしょうか。みんあTVドラマや映画は好きだし、インターネット上の書き込みなんかも楽しんで見ているでしょう? フィクションとして愉しんでいるんだから、”物語”を欲する志向は、それなりに脈々と続いていると思うんですよ。ところが本を読むということになると、何か堅苦しいイメージが立ちはだかってるような気がする。コミックも買うしゲームも買う、それと同じように文庫も買うという流れになれば、読者の気分も、なんていうか今より自由になるんじゃないでしょうか。自分のカンで選んで読んで、各人の好みで楽しんでいけばいいのではないかと……。】
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この本には、姫野さんの他にも、伊坂幸太郎さんのインタビューや、書店で働いている人たちの話が紹介されているのですが、僕が思っている以上に、みんな「文庫」という書籍の形態に愛着を持っているのだなあ、ということを思い知らされました。
作家や書店の立場からすれば、「ハードカバー至上主義」であり、「文庫は安いし儲からないから、新刊書のオマケみたいなものだ」とか「みんな文庫ばっかり買わずに、もっと新刊書を買ってくれ!」というのが本音だと予想していたのですが、「本が好きな人々」にとっては、「とにかく、いろんな人に、もっとたくさん本を読んでもらいたい!」というのが一番の願いのようなのです。確かに、中学生や高校生の頃から1000円以上もする新刊書を好きなだけ買えるような人生を送ってきた人なんていないだろうし、人気作家だって、書店員だって、本を好きになった時代に「自分で買える本」は、「文庫本」だったのですよね。
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02月01日(水)
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