ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■口に入れたものすべてを写真に撮った男
「本の雑誌」(本の雑誌社)2006.1月号の鏡明さんの「連続的SF話・258〜365日目のシリアル」より。
【「everything i ate」は、先月、書いたと思うけど、タッカー・ショーというライター/ヤング・アダルト作家が、2004年の元旦から大晦日まで、365日、何を食べたか、食事だけではなく、間食からキャンディまで、すべてを写真に撮って、まとめた本。
で、出版社に、出版をもちかけたときに、担当の編集者が「でも、それって、あまりにも個人的に、すぎるんじゃない?」と返事をする。タッカー・ショーの反応は、うーん、そりゃそうだ。たしかに個人的さ、でもさ、それで、何が悪い、何が悪いってんだ。これは、自分が、この人生でやった最も正直な作業なんだ!
たしかに、そのとおりです。365日、すべてで、格好をつけるわけにはいかない。一応、食物のライターもやっているみたいだが、それでも、演出するわけにはいかない。とにかく、口に入れたものすべてを写真に撮る。それがルール。この「すべて」っていうのが、すごい。
(中略。1999年に出版されたという、こぐれひでこさんの「ごはん日誌」という本のことが書かれています。こちらのほうは、「すべてではないし、写真やその日の行動について、エッセイ風の短文がそえてある。つまり、ちゃんとした読み物になっている」そうです)
タッカー・ショーの方は、データである。食べたものの名前と、場所、その場にいた人の名前が、書いてある。それだけ。だからこそ、すべての写真ということに意味がある。
たとえば、2004年の1月1日。最初の日ね。写真は、3枚。午後2時34分。トウ・ブーツの冷たくなったピザ。ソーセージ&オニオン。次は午後8時47分。シリアル。家で。9時02分。トライアル・ミックス。家で。
これだけ。おまえら、元旦なのに、しかも、この馬鹿げた企画の初日なのに、冷たいピザかじって、あと、シリアルで、終いなの?とまあ、言いたくなるほどの素気なさ。
では、最後の12月31日は、というと、こちらは、なるほど、がんばってくれている。全部で11種類。朝9時50分ブリオッシュ。1時42分マッシュルーム・キッシュ。3時58分中華ちまき、以下時間他省略。ポークヌードル・スープ、小龍包、生クリームとキャビア、トリュフとマッシュルーム・スープ、ペッパーココナッツ・ソースのタラ・ステーキ、ホワイト・チョコレートとスフレ、で、最後の最後に何を食ったか。実は、もう真夜中を過ぎて、元旦に入っているんだけどね。2時36分。
シリアルにミルクをかけて食っている。たしか、初日にもシリアルを食べていたわけで、リアリズムって、そういうことなんだ。
(中略)
食物が、生きるための補給物資ということでも、楽しみのためでもなく、日常と、その記録になるということだと、言ってもいい。タッカー・ショー自身の言葉でも、「この写真を見直していると、そのとき、どこで、誰と、どんなことを話していたのか、みんな、思い出すことができた」ということになる。読者である私には、そんなところまではわからないが、それでも、タッカー・ショーの生活がわかるような気もするし、自分自身との対比を、無意識に行っているようにも思う。極めて、個人的な試みであるけれども、それが、コミュニケーションを拒否しているわけではない。かえって、そのことによって。共有できるものがあるように、思える。】
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ネット上にも「食べたものを淡々と記録するよ」という有名サイトがあるのですが、確かに「食べたもの」と、そのときのイベントや生活パターンというのは、密接に関わりあっているんですよね。例えば、ここに引用されているタッカー・ショー(Tucker Shaw)さんの「食生活」の一部だけでも、けっこういろんなことを想像してしまいます。新年というイベントにはあまりこだわらない人なのかなあ、とか、キャンディまでというのは、けっこう几帳面な性格の人なんだろうなあ、とか。
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12月30日(金)
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