ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「将棋プロ編入試験」が生み出す「残酷な希望」
読売新聞の記事より。

【61年ぶりに将棋界の重い扉を開いたのは35歳の会社員だった――。1944年以来の実施となった将棋プロの編入試験。アマ強豪で会社員の瀬川晶司さん(35)が6日、六番勝負で3勝目をあげ、プロ棋士四段の資格を獲得した。
 午後5時51分、対戦相手の高野秀行五段が投了を告げると、将棋の取材では異例ともいえる29社の取材陣が一斉に対局室になだれ込んだ。目を真っ赤にした瀬川さんは「まだ(プロ入りの)実感がわかない。勝ててうれしいです」と話すのがやっと。
 2勝2敗で臨んだ第5局。後手番となった瀬川さんが、得意の「中座飛車」戦法を採用。飛車角が飛び交う空中戦となり、形勢が二転三転した。慎重な棋風の瀬川さんは5局連続して秒読み将棋に追い込まれながらも、最終盤は的確な指し手を続け、プロの座を手中にした。
 終局後、記者会見した瀬川さんは、「今まではプロ試験にいつも追われている気持ちだったのでほっとした。温泉にでも行ってのんびりしたい」と話した。
 一方敗れた高野五段は「プロとしての責任を感じるが、精いっぱい指したので悔いはない」ときっぱり語った。
 将棋連盟に棋士の兼業を禁止する規定はないが、瀬川さんは現在勤務している会社を退職して将棋に専念することになりそうだ。
 試験規定によって、瀬川さんは名人戦の予選を除く9つの公式戦に参加できるが、今後10年間のうちに規定の成績を上げないと公式戦の参加資格を失う。】

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 瀬川さんは、14歳から26歳まで、唯一のプロ棋士養成機関である「奨励会」に所属してプロ棋士を目指していましたが、結局、夢破れてプロ棋士には届かず、大学の二部(夜間)を卒業し、30歳でコンピューター関連会社に就職されました。奨励会退会後は、アマチュアとして数々の大会で活躍し、プロ棋士との交流戦で17勝7敗という驚異的な戦績を残し、自ら将棋連盟に「挑戦状」を送り、今回、ついにプロへの門戸をこじ開けたのです。
 今までのプロ棋士の世界の「鉄の掟」を破る、この「特例措置」は、非常に大きな話題となりました。
 将棋連盟の米長邦雄会長は、「瀬川さんが買っても負けても、これだけ話題になれば、将棋連盟としては『勝ち』だな」と仰ったそうですが。
 そもそも、奨励会自体が、いわゆる「将棋エリート」の世界なのですけど、その会員のなかで、実際にプロになれるのは2割くらいなのだそうです。要するに、残りの8割は、26歳(あるいは、もっと若くして諦める人も多いのでしょうが)という若さで、プロへの道のりを絶たれてしまいます。なかには、今回の瀬川さんのような「晩成型」の成長過程をたどる人も少なくないでしょうから、考えてみれば、「26歳」という年齢制限というのは、理不尽極まりないような気がします。この話題を取り上げたニュースなどでも、そういう論調が多かったようですし。
 ただ、将棋連盟としては、今回の措置はあくまでも「特例」であり、今後「門戸開放」を積極的にしていくつもりはない、とコメントしています。いや、将棋界そのものの全体のパイはたぶん一定のものなのでしょうから、プロ棋士の数が増えすぎるというのは、或る意味、既得権益の低下につながり、「プロが多くなりすぎれば、食いっぱぐれる者も出てくる可能性がある」のですから、それは致し方ないことなのかもしれません。
 僕は今回の瀬川さんの「偉業」に大きな拍手を送りたいのですが、その一方で、この「偉業」は今後、たくさんの「悲劇」を生み出すのではないかという気もしているのです。

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11月06日(日)
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