ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■インターネットの「善意」
※「駄文にゅうす」さんからいらっしゃった方は、こちらへどうぞ(「編集権」等の話)


「ほぼ日刊イトイ新聞の本」(糸井重里著・講談社)より。

【いつものようにクリーチャーズ(糸井さんと付き合いのあるゲーム製作会社)に顔を出したとき、友だちというか部下だったというか、ある仕事仲間がパソコンのディスプレイを一心に見つめていた。
 何をそんなに熱心に見ているのか。気になってぼくもディスプレイをのぞきこませてもらったら、何やらいろいろな人の意見が記してあるようだった。
 ちょうどサッカーのワールドカップ98アジア最終予選が開催されていた時期で、ワールドカップ関連のホームページに書き込まれた意見を、彼は呼んでいたのである。
「サッカー日本代表を応援するホームページ」というサイトがそれだった。
「サッカー日本代表を応援するホームページ」に書き込まれていた内容は、ぼくを驚かすのに十分だった。
「『○○チームの△△は怪我で右足を負傷し出場できない』とニュースで報道されていましたが、ふらっと□□競技場へ立ち寄ったら練習試合で右足を使ってシュートを決めていましたよ」
 日本で見たり聞いたりするテレビや新聞などには載らない極秘情報が、さりげなく記されていたのだ。商社マンとして現地に赴任しているサッカーファンが、マスコミの派遣記者には発見できないような事実を拾って書き込んだものなのである。
 ここの掲示板ページでは、十一月に日本代表が念願のワールドカップ出場を決めたマレーシアのジョホールバルでのイラン戦のときなどは、
「月曜日のジョホールバルの試合をぜひ現地で観たい。でも、金曜日は午前11時から課内会議があるし、月曜日は午後2時から東京本社の営業販売促進会議に出なければならない。会議にきちんと出席し、現地で試合を観るための方法があったら教えてほしい」
 などというファンの質問に対し、別のファンが、
「いい方法がある。JALの成田16時20分発☆☆行きの便に乗ってシンガポールまで飛び、シンガポールから9時41分発ジョホールバル行きのバスに乗ればいい。競技場周辺にかならずダフ屋がいるから、チケットはなんとかなる。帰りは□□航空の○○行きの便に搭乗し、シンガポールで乗り換えれば午前11時半までに成田に到着できるから会議に間に合うのではないか」
 なんてことを答えていた。
 サッカーに熱い思いを持つファンが、同じ熱狂的ファンに役立つための情報をなんの見返りも考えずにアドバイスしているのだ。
 いままで、商社マンなら商社マン、教師なら教師、運転手なら運転手という具合にその人の人格は職業と一体のものとして見られがちだったと思う。
 実際は、そこにくくりきれないものを、皆持っているのは当たり前のことなのだが、ついつい忘れてしまう。

(中略)

このページを見たとき、情報の取り方や使い方が大きく変わってきたんだなあと思った。
 個人個人が職業や肩書きに関係なく情報を発信し、またそれを受けとめる一人ひとりの人間が存在する。そこでは興味や関心、個性などをひっくるめたまるごとの人格同士が交流していた。
 ここから何かとんでもない変化が起こるような気がした。
 人間は経済行為だけで動くものではない、損得だけで動くものでもない。身銭を切ってでも何かをしなければいけない、何かをしたいというものを、みんな持っているんだな、という子どものころに信じていたことが、ありありと再現されていた。
 驚きもしたが、何より、気持ちがよかった。
 いいものを見た。いいことを知ったという思いがあった。
 インターネットというものは、こりゃ、すげぇものかもしれない。これを知らないままでこの先、生きていくのはむつかしいぞ、とさえ思った。
 気持ちのいい衝撃があった。】

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04月02日(土)
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