ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■漱石と鴎外と太宰と藤村の「著作権ビジネス」
夏目漱石とか森鴎外クラスになると、「出版社との契約条件」も違っていたなんて。漱石や鴎外はヨーロッパへの留学経験がありますので、その影響が大きかったのかもしれませんが、それにしても、「買い取り」が主流だった時代に「印税契約」を結んでいたのがこの日本文学界の2大巨頭だったというのは、頷ける話であると同時に、巨匠というのはお金にもこだわりがあったのだな、ということを考えさせられます。幸田露伴の場合も、長い目で見れば「印税契約」はプラスになっているでしょうし。全盛期には漱石、鴎外も及ばないような人気作家であった尾崎紅葉が、「買い取り契約」しか結んでおらず、大ベストセラーを生んでもそんなに大きな収入にはつながらなかったというのは、彼の作品が後世あまり読まれていないこともあって、なんだか漱石・鴎外との「格の違い」みたいなものを感じさせられますし。
自費出版で大儲けした島崎藤村なんて、まさに今の「ずっとインディーズのミュージシャン」を彷彿とさせられます。
そういう点でいえば、村上春樹は、出版社の契約条件においても、現代の日本の作家のなかでは「別格の人」と言えるのでしょう。
しかし、生前は多額の借金に追われていたという太宰さんは、まさか自分の作品がこんなに売れて、子孫の懐を潤わせることになるなんて、夢にも思っていなかったでしょうね。「10分の1でいいから、生きている間にその金があれば……」と言いたかったと思われます。遺族側としても、金銭的なメリットはあったにせよ、「太宰治」というスキャンダラスな存在を抱えて生きていくのは辛かったという面もありそうですが……
延長にこだわる作家にはほとんど恩恵がなさそうなのに、自分が死んだあとのことなんてほとんど考えてもいなかったような作家に大きな恩恵がもたらされてきたというのは、なんだかすごく皮肉な話ではあるのですけど。
03月06日(火)
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