ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「新宿駅最後の小さな飲食店」の「困ったお客様」への接客術
 そういう表示をしなければしないで、それを盾に逆ギレするお客さんがいらっしゃいます。「どこにも表示がないじゃないか」と。それを恐れて店は表示するのでしょうが、そういうお客様は数からすればごく少数ですし、その少数の方のためにわざわざマイナスオーラの出る表示をする必要はないと思います。
 また逆ギレするお客様はなぜするかというと、恥をかかされるからです。持ち込みをしないでくださいというのは、いくら相手に非があるとしても、またこちらが頭を下げてお願いしても、いわれた方は公衆の面前で叱られているのと同じことです。鬼の首を取ったように指摘する店員もいますが(気持ちはわかります)、いっていることは正しくても、お客様の気持ちに対する配慮が欠けています。
 では見て見ぬふりをするのか? 私なら、まずちょっと様子を見ますね。あまりにもあからさまな場合は、ほかのお客様に気づかれないようにそっと店の食器を差し出し、持ち込んだものの中身だけをそちらに移していただくようお願いします。そのときに、一応(建て前上)お持込みはご遠慮いただいておりますので、もとの容器は隠していただけますか?と食器を代えていただく理由を申し上げるのです。そのお客様は恥をかかずに自分がルール違反していることに気づくことができますし、その場の持ち込みはこっそり認められるので、特別扱いを受けたような得したような気持ちにもなれます。
 店には店の都合がありますが、それを通すにしても、いかに通すかです。そこで接客の腕が試される。まずお客様の気持ちが何よりも優先されなければなりません。】

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 『ベルク』は、新宿駅にあるわずか15坪のセルフサービスのファーストフード店。安さと食べ物のクオリティ、雰囲気づくりへのこだわりもあって、一日平均1500人ものお客さんが来るほどの人気なのだそうです(僕は残念ながら、この本を読んではじめて『ベルク』の存在を知ったのですけど)。

 僕はこれを読みながら、三谷幸喜監督の『THE 有頂天ホテル』の冒頭のシーンを思い出していました。
 ホテルのレストランで女性と食事をしている男性が、取り皿と間違えた灰皿で女性に料理を取ってあげているのをスタッフから告げられたときの、役所広司さんが演じていた副支配人の行動。
 副支配人は、「あのお客様に、灰皿だと告げる事は彼に恥をかかすことになる。すぐ、全部のテーブルに置いてある灰皿を片付け、その灰皿とは明らかに違う型の灰皿に変えなさい」とスタッフに指示を出して、その場をしのいだのです。

 僕はあの場面を観て感動しながらも、サービスっていうのは、突き詰めていくと、かえって大仰になりすぎて苦笑してしまうところがあるなあ、と考えたものです。

 ここで紹介されている『ベルク』の接客は、「客回転が速いセルフサービスの店」としては、やりすぎなのではないかと思われるほど誠実なもののように僕には感じられます。こういうポリシーで接客されれば、お客としては文句のつけようがない。
 まあ、僕自身は「1人で4人席に座って、あとで席を移ってくださいと言われたり、相席を頼まれたりする」煩わしさを考えると、空いている店でも「最初からカウンターでいいや」と考えてしまうんですけどね。たぶん、僕みたいな客も少なくないはず。
 それにしても、あまり流行っていないように見えるレストランでも「御予約席」の札がテーブルに掲げられているのは、こういう理由があったからなのか……

 高級レストランに「持ち込み」をする人はまずいないだろうと思われるのですけど、『ベルク』のような駅にある店、しかもセルフサービスだと、たしかに「持ち込み客」が死活問題だというのはよくわかります。単に「座って休みたい」だけの人が休憩所がわりに入ってくることだってありそうだし。
 そういうお客さん(?)に対する井野さんの「対処法」には「なるほど!」と感心させられるのと同時に、「サービス業っていうのは、ここまでお客に恥をかかせないように気を配らなければならないのか……」と驚いてもしまうのです。
 だって、「常識的」に考えれば、どうみてもそんな客のほうが悪い、というか、そんなの客じゃないだろ、と。


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09月28日(日)
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