ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■宮崎駿監督を悩ませた、『風の谷のナウシカ』の「3つのラストシーン」
 で、「鈴木さん、手伝ってください」と言うので、二人でラストシーンの案をいろいろ考えた。案は3つでした。A案は宮さんの案そのまま。王蟲が突進しその前にナウシカが降り立って、いきなりエンド。これはこれで宮さんらしいけどね。B案、これは高畑さんが言い出したもので、王蟲が突進してきてナウシカが吹き飛ばされる、そしてナウシカは永遠の伝説になる。C案、ナウシカはいったん死んで、そして甦る。
「鈴木さん、この3つの案のなかで、どれがいいでしょうかね」
「そりゃ死んで甦ったらいいですね」
「じゃ、それで宮さんを説得しますか」
 それで二人、宮さんのところへ行きました。そういうとき高畑さんはずるいんですよ。みんなぼくにしゃべらせる。どうしてかというと、責任をとりたくない(笑)。自分が決めて、それに宮さんが従ったとしても、もしかしたら宮さんはあとで後悔する、そうすると自分の責任になるでしょう。それが嫌で、ぼくに言わせたいわけ。わかってましたけど、しようがないから、ぼくが案をしゃべる役回りになりました。
「宮さん、このラストなんですけど、ナウシカが降り立ったところで終わっちゃうと、お客さんはなかなかわかりにくいんじゃないですか? いったんバーンと跳ね飛ばされて、死んだのかと思ったところで、じつは甦る、というのはどうでしょう?」
 そのときもう公開間近で、宮さんも焦っていた。宮さんは話を聞いて、「わかりました。じゃ、それでやりますから」と言って、いまのかたちにした。『ナウシカ』のラストシーンに感動された方には申しわけないんですが、現場ではだいたいこんな話をしているんですよ。
 このラストシーンがじつはあとで評判になってしまいます。原作とまるでちがうじゃないかという声もあって、いろいろ論議を呼びました。宮さんはまじめですからね、悩むんです。深刻な顔をして「鈴木さん、ほんとにあのラストでよかったのかな」と言われたときには、ぼくはドキドキしました。いまだに宮さんはあのシーンで悩んでいますね。】

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 あのラストシーンに感動してしまい、涙が止まらなかった僕としては(映画を観て泣いたのはあれが生まれてはじめてのことだったので、いまでもよく覚えているんです)、「あのラストでいいに決まってるじゃないですか!というより、あれ以外にありえない!」と強く主張したいところではあります。あの「青き衣をまといて金色の野に降りたつ」ナウシカの姿こそが、『風の谷のナウシカ』の「最大の見せ場」のはずなのに。
 
 ところが、スタジオジブリの名プロデューサーであり、宮崎駿・高畑勲両監督の盟友でもある鈴木敏夫さんによると、あのラストシーンは、「本来、宮崎駿監督が考えていたもの」とは、全然別物になってしまったんですね。
 もし、「王蟲が突進してくる前にナウシカが降り立った場面でエンドマーク」とか、高畑さんの案の「王蟲が突進してきてナウシカが吹き飛ばされる、そしてナウシカは永遠の伝説になる」というようなラストになっていれば、たぶん、『風の谷のナウシカ』に対する世間の評価というのは、まったく違ったものになっているのではないでしょうか。
 完成版のラストシーンよりも「メッセージ性は高い」ような気もしますけど、その結末を見せられれば、気分よく映画館を出てくるのは難しいはず。

 鈴木敏夫さんは、『アニメージュ』という雑誌の編集に関わったのをきっかけに宮崎駿、高畑勲両監督と知り合い、彼らの作品に惹かれて、徳間書店の編集者から「スタジオジブリ」の主要スタッフとして活躍されています。
 元々「アニメ制作者」ではない鈴木さんの「映画に声優ではなく、タレントを起用しての話題づくり」や「タイアップによる宣伝」などに対しては、批判的な声も根強くあるようですし、僕も「やり手の営業マン」「豪腕」のイメージがあって、ちょっと苦手なタイプの人だな、と思っていました。 

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08月31日(日)
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