ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■スティーブ・ジョブズの「3分間で100億円を生むプレゼン」と「ホワイトボードへの異常な執着」
 ジョブズは、もともとアルビーの批判には比較的素直に耳を傾けていた。ときには指摘を検討することもあった。パソコンビジネスでは経験も才能も他を圧倒していたジョブズも、映画制作では素人だった。CG制作の経験豊富なアルビーの意見は十分聞くに値した。
 ところが、ある会議の席上、いつものようにジョブズが会議室でホワイトボードに書きながら話をしているところに、アルビーが割って入った。そこまではよかった。だが、アルビーがホワイトボードのところに行き、意見を説明しながらボードに書き込もうとしたのが致命傷となった。
 とたんにジョブズが爆発した。ヒステリックに叫び、アルビーをさげすみ愚弄する言葉を投げつけると、部屋を飛び出していった。
 ジョブズは基本的にマイクロ・マネジメントを行う。現場のこまかい点にまでくちばしを突っ込んで、担当者レベルの些事までコントロールしたがる。といって、ホワイトボードへの猛烈な執着は不可解だ。
 ジョブズには、「自分の」ホワイトボードに「自分以外の」アルビーが書き込むという行為が許せなかったらしい。ホワイトボードのどこに、そんなにこだわる価値があるのか。
 その答えは、世界中でジョブズただ一人しか知らない。
 ともあれアルビーは辞表を提出し、ピクサーは重要な人材を失うこととなった。
 しかしジョブズは、まだ気に入らなかった。ピクサーの歴史まで変えようと行動した。スピーチやインタビューからも、ピクサーのウェブサイトからもアルビー・レイ・スミスという名前を抹殺した。ピクサーをCGの先頭を走る企業とするために、何年も尽くしてきた人物だというのにである。
 ジョブズは太陽のようなものかもしれない。距離を置いていると暖かく心地よい。しかし近づきすぎると灼熱のエネルギーーで燃やし尽くされて滅ぶ。
 巨大イベントで、ジョブズはハリウッドスターのように何千人もの観衆を魅了するが、会議室では、怒鳴り、服従させて指示を出す。ジョブズのエネルギーは、半径10メートル以上離れている人々を熱狂させ、半径5メートル以内の人々を恐怖に陥れる。】

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 神か悪魔か、スティーブ・ジョブズ。
 ジョブズという人のさまざまなエピソードを読んでいると、僕のなかでは曹操や織田信長のイメージが浮かんでくるのです。

 この1984年1月のジョブズのプレゼンの記事をパソコン雑誌で読み、当時まだ中学生だった僕は、すごく感動したものでした。
 今と違って、「パソコンが喋る」ということだけで大きな驚きであった時代に、新しい「夢のマシン」であるマッキントッシュが、こんなにカッコよく登場するなんて!
 「普通の新製品のプレゼンテーション」であれば、演者が「マッキントッシュはこんなマシンで、こんなふうに喋れます!」と紹介するはずです。ところが、この「伝説のプレゼン」では、「マッキントッシュが生みの親であるジョブズを紹介している」のです。当時のパソコンの機能ですから、そんなに自由自在に喋れるわけがなかったのに、こういう「見せかた」の工夫によって、「マッキントッシュは夢のマシン」だというイメージ作りに見事に成功したジョブズ。本当に、アップルというのは「お洒落な企業」だったのですよ当時から。
 もっとも、ジョブズは企業のトップとしてはあまりにも独善的・専制的で、マッキントッシュの売れ行きが発売後しばらくすると鈍化してしまったこともあり、この後アップルを追放されているんですけどね(ジョブズは1985年にアップルの会長を辞職、1997年にアップルに復帰)。

 しかし、アルビー・レイ・スミス事件でのジョブズの行動には、「経営者として」以前の「人間性の問題」があるんじゃないかと思わずにはいられません。

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08月18日(月)
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