ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
[10024343hit]
■清水義範さんの「おわびの文書を書くコツ」
〜〜〜〜〜〜〜
何年か前、某ベーカリーレストランからの「お詫びの葉書」を貰ったことがあります。
そのレストランは、食事の際にスタッフが「いろんな種類の焼きたてのパン」を持って各テーブルをまわってくれる、というのがセールスポイントなのですが、その日はものすごくお客さんが多く、また、オープンして間もない時期だったということもあってか、とにかく酷い状況だったんですよね。
料理が出てくるまでに1時間くらいかかったし、待てど暮らせど「焼きたて」どころか、冷えたパンの1個すら出てきません。とにかくすべてがうまく回転していなくて、厨房からは、怒鳴り声まで聞こえてきたのです。
それでもなんとか最後まで食事を終えて、僕と妻(当時はまだ結婚していなかった)は、その店の「アンケート用紙」を手に取り、その日のその店のサービスにいかに失望したかを書いて出てきました。
普段は、多少気にいらないことがあっても「いちいち文句言うほうがめんどくさい」と黙って出てしまうのですが、その店には何度か行っていて、けっこう良い店だとも思っていたので、その日感じた「失望」を書かずにはいられなかったのです。
1週間くらい後、アパートの郵便受けに、その店からの葉書が来ていました。内容はまさに「平身低頭のお詫び文書」。
そこには手書きで「あなたの大事な時間に不快な思いをさせてしまったこと」に対して、切々と謝罪の気持ちが書かれていたんですよね。
まあ、実際には、彼らの「努力」は、全く僕たちの心には響かなかったのですけど……
その「謝罪文」が、まさにこんな感じの文章だったなあ、と僕はこれを読みながら思い出したのです。
面識がないけれども謝らなければならない相手の場合、それまでの交情に訴えることもできないし、「形式的」にならざるをえないのは仕方ないですよね。
まあ、日頃のつき合いがある相手でも、「友達なんだから許してよ」というような馴れ馴れしい謝罪は、かえって逆効果になったりしがちではあるのですが。
ここで清水さんが書かれている「謝罪文のフォーマット」は、とても現実的かつ有用なものです。
僕たちは、他人からの謝罪文を読むとき、「そんなに長々と書かなくても」と考えがちなのですが、こういうのって、「こんなに長い手紙書くの大変だっただろうな……」と思わせるだけでも、それなりに効果があるのかもしれません。例のレストランから送られてきた「謝罪の葉書」に対しても、「あそこの店員さんやバイトの人たちは、あんなに働かされたり怒られたりした上に、こんな葉書まで書かされたなんてかわいそう……」と、ちょっと「同情」してしまいましたしね。その一方で、「どうせ偉い人に強制されて、嫌々書いているんだろうな」と白けた気持ちにもなったのですけど。
たぶん、「謝罪文」でいちばん大事なのは、「弁明はするべきだけれども、『だから自分は間違っていない』と開き直ってはいけない」ということなのでしょう。内心はどうあれ、こういうふうに「全面的に謝られる」場合、よっぽどのクレーマーでなければ、「尾を振る犬は打てぬ」というのが人情のはず。
とりあえず、この「謝罪文の書きかた」は、覚えておいて損はなさそうです。役立てる機会が無いほうが良いには決まっているのですが。
ところで、僕がその某ベーカリーレストランからの謝罪の葉書でかえって不快になった理由っていうのは、「一字一句がすべて同じ内容の葉書が、妻のところにも送られてきたこと」でした。
「実際はそういうもの」だというのはよくわかるんだけど、同席していた人たちに全く同じ内容の謝罪文では、「お手本通りの謝罪葉書をうんざりしながら書かされているバイトの人や若い店員のうんざりした表情」が、あまりにリアルすぎるのです。
こういうのって、わざわざアンケートに答えているんだから、内容を読んで多少なりとも「謝罪」の文章をアレンジしてあれば、受けた印象も違うんだろうけどねえ……
03月15日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る