ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「本は捨てられない」という微妙な感情
 ただ、本当にすべての読者が「新古書店でしか本を買わない」というようになってしまっては、いつかは新しい本が出なくなってしまいますよね。そして、どんどん古くなっていく「昔出た本」が新古書店で循環されていくだけ、と世界になってしまう可能性だってあるわけです。一介の本好きでしかない僕にとっては実感が湧かない話なのですが、出版業界にとっては、「売れそうな本しか出せなくなってきている」のは確かなようです。「優れた作品を書いても食えない」ということになれば、作家や漫画家の質も落ちていく一方でしょう。

 しかしながら、僕もやっぱり「本を捨てられない人間」なんですよね。
 本を傷つけるのはしのびないし、さりとて、これ以上、本に部屋を占拠されたら生活するためのスペースが無くなってしまいます。引越しをするときなどは、まさに「本地獄」。引越しセンターの屈強な人々が本のギッシリ詰まったダンボールを持ち上げようとして苦悶の表情を浮かべているのを見るたびに、申し訳ないなあ、と思うのです。
 それで最近は、某ブッ●オフに本を持っていくことも多くなりました。
 実は、ブッ●オフで買い取ってもらうメリットというのは、「お金がもらえる」だけではないんですよね。
 都会ではどうかわからないのですが、田舎では、「多量の本を一度に捨てる」のは、けっこう大変。引き取ってくれる日は2週間に1回しかないとか、かなり遠い収集センターまで運んでいく必要があるとか、いろんな制限があります。
 ところが、ブッ●オフは、持ち込み(あるいは、出張買い取りを依頼)さえすれば、収集日じゃなくても、気軽に本を引き取ってくれる(どころか、お金まで払ってくれる)のです。
 それでも本を「捨てる」ほど、僕はブッ●オフを嫌いにはなれません。

 喜国さんが、「出版する側の人間」として、愛する本に自ら傷をつけてまで「新古書店に抵抗する」という姿勢はすごいと思います。でも、読書家の大部分である、「本は好きだけど、そんなに経済的な余裕もないし、新刊書店に操を立てる必要もない人」たちには、たぶん、そこまで「愛する本に対して、自分でけじめをつける」覚悟はないはず。「捨てられた犬がどこかで幸せになる可能性はものすごく低い」ことが頭ではわかっていても、捨てるのではなく自分で保健所に連れて行って「決着をつける」人が少ないのと同じように。
 そもそも、本をブッ●オフに売るのに、「飼い犬を捨てる」ような「罪悪感」を持つ人のほうが、圧倒的に少数派でしょうしね。

 「自分の読んだ本が、知らない誰かの手に渡って、その人を感動させる」というのは、新古書店に本を売る側のひとつの「ロマン」です。
 でもまあ、そういうのって、「少しでもお金にしたい」とか「ゴミの日に早起きして出しに行くのがめんどくさい」という自分の欲望や怠惰さに対するカモフラージュ、という面もあるのかもしれませんね。

 面白い新刊書が無くなってしまうのは困るんだけど……と思いつつ、結局ブッ●オフに本を多量に買い取ってもらっている僕のような「本好き」が、きっと、ブッ●オフを支えているんだろうなあ……

12月07日(金)
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