ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
[10024417hit]
■「キレる大人」として生きるということ
鴻上さんが引用されている朝日新聞の記事、僕も読んだのですが、「若者ほどキレやすいのではないか?」というイメージに反して、実際に「キレている大人」は30代以降が多いのです。僕が10代の頃に抱いていた、「人は年を重ねると落ち着きが増し、精神的にも安定してくる」というイメージは、大人の「実像」とは異なるものでした。
病院でも、夜間の救急外来で、「病院のくせになんで待たせるんだ!」「うちの子に何かあったら責任取ってくれるんだろうな!」「たらいまわしにするんですか!」とキレている患者さんの対応をしなければならない場合は多いんですよね。
学校とか役所とか、「お客様第一」を謳っている飲食店とかもそうなのですけど、大人たちは、「自分がキレても、けっして反撃してこない(あるいはできない)相手」を選んでキレまくります。当たり前ですが、彼らは暴力団の事務所の前ではキレないし、この新幹線の「キレサラリーマン」もコンビニの前で大声で騒いでいる高校生に対してすら、キレられないのではないでしょうか?
こんなふうに「弱いものに対してしか向けられない、鬱憤晴らしのような『キレ』」というのは、本当に、悲しいし、情けないものです。そもそも、彼らは本当に相手に対してキレるだけの理由を持っているのではなくて、自分が抱えている時限爆弾を、安全なところで爆発させてスッキリしたいだけなのですから。
でもさ、こういう「キレサラリーマン」も、会社や取引先で上司やお客さんの理不尽な言葉に平身低頭しているのかもしれないし、このワゴンのお姉さんも、買い物に行ったデパートでクレーマーになっているかもしれないんですよね。今は、そういう時代なのだと思う。
正直に言うと、僕も最近、すっかりキレやすくなりました。「お客様」である患者さんには伝わらないように心がけているけれども、看護師さんの手際が悪かったり、寝不足のときに救急車が相次いで来たりすると、「爆発する」ことがあるのです。僕の実感としては、20代、新人のときは、「嫌われてはいけない」「そんなことではこの業界で上に行けない」なんていう「ストッパー」がかかっていたのですけど、年とともに「どうせ僕はそんなに偉くなれるような人間じゃないしな」「この職場を追われても、どうせそんなに人生変わらないしな」というような「負の悟り」みたいなものが出てきてしまっているんですよね。ほんと、我ながらみっともないし、キレてしまったあとには、心の中ですごく反省するんです。
でも、その一方で、「時々少しキレておかないと、際限なく自分の仕事が増えたり、精神的に追い詰められていくんじゃないか?」という恐怖もあります。
僕には「キレサラリーマン」を責める権利はないし、僕もそんなふうに他人から見えている瞬間があるのではないか、と考えずにはいられません。
お願いだから、誰かキレずに心安らかに日々を過ごせる方法を教えてほしい……
……とか言ってたら、宗教の勧誘の人が僕のところに一斉に集まってくるんだろうなあ……なんかもう、どうしようもないや……
11月05日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る