ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「常連客」になってしまうことの憂鬱
 母親から100円玉を1枚もらって、「これで好きなものを買っていいよ」と言われ、通いなれたこの店にやってきた僕は、何を買おうかと迷った末、なかなか買いたいものが見つからず、結局、10円のお菓子をひとつだけ手に取り、それをレジに持っていきました。
 すると、店番のおばあちゃんは、不機嫌そうに
「たった10円で100円玉……」とか言いながら、いかにもめんどくさそうに90円のお釣りをくれたのです。
 いや、こうして書いてみると、たいしたことないことだったようにも思えるのですけど、当時の僕には、とても嫌な経験でした。その後、その店にひとりで買い物に行ったことは一度もないくらいに。

 もうひとつは、大学時代のこと。ある昼下がり、近所のマイナー系の(セブンイレブンやローソンやファミリーマートなどのチェーン店ではない、という意味です)コンビニ的な個人商店に入った僕は、そこで食料品をたくさん買ったのですが、店番をしていた中年のおじさんが、「ひもじかったんでしょう?」とレジで声をかけてきたのです。
 方言なのかもしれないけど、「ひもじい」っていう言葉の語感が、その時の僕にはひどく不快に感じられたんですよね。まあ「お腹すいてたんですねえ」って言われてもムカついたとは思うのですが。これも、今から考えれば、接客に慣れていないおじさんの精一杯の「お客とのコミュニケーション」だったのだろうな、という気がするのですが、正直、僕は自分の空腹度について店員さんにコメントして欲しくなんかないんですよ(かわいいお姉さんだったら、また別の感想を抱いたかもしれませんが)。でも、こういう
「よけいなお世話」と「コミュニケーション」だと勘違いしている店員さんって、けっこういるんですよね。

 僕は「常連」になるというのがどうも苦手なのです。「常連」になると「特別扱いしてもらえる」というのがメリットなのかもしれませんが、その一方で、「常連」というのは、店の人から注目される存在です。
 たとえば料理店で、「いつも来てくださるので、これサービスです」って何か一品出してもらったら、その「サービスしてくれたもの」に対して、何かポジティブな感想を言わなければならないし、不味くても残すのは悪いですよね。そういうのって、僕にとっては、ものすごくプレッシャーなのです。本音を言えば、「特別なサービス」なんてしてくれなくてもいいから、僕を面倒なことに巻き込まないでくれないか、と思います。
 まあ、こういうのって、僕が「自意識過剰」だからなのでしょうけど……

 コンビニですら、毎日同じ店に行くのはなんとなく嫌で、わざわざ遠くの店に行ったりもしているというのは、ちょっと病的なのではないかと自分でも思います。
 というわけで、僕は下町には絶対に住めそうにないです。ドラマとしての「下町情緒」には、憧れの気持ちもあるんですけどねえ。

10月06日(土)
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