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活字中毒R。
by じっぽ
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■西原理恵子さんと『100万回生きたねこ』
僕は西原さんの『毎日かあさん』などの「家族モノ」の著作から、西原さんは昔から面倒見がよくて子供好きな人だったのではないか、というイメージを持っていたのですけど、このインタビューのなかで、西原さんは「家族を持つのは不幸になることだと思っていた」と告白されています。そして、子供のころ貧しかったがために、売れっ子になってからでさえ、自分、そして自分の家族が「『負のスパイラル』に陥るのではないか?」と苦しんでいたということも。
子供を持たない僕は、社会の中で生きていて、心のなかで、「そんなに『子供』とか『家族』って立派なものなの?」と考えることが多いのです。傍からみれば、「子供のため」「家族のため」という錦の御旗を掲げて自分のワガママを正当化しているだけのように見える人って、けっこういますしね。
しかしながら、実際問題として、ごく普通の才能しかないひとりの人間として、自分が後世に残せる可能性があるものは「遺伝子」くらいしかないのかな、と感じることもあるのです。
世間には、あの村上春樹さんに対して、「でも、村上さんには『子供』がいない」なんて憐れむ人だっているくらいですし。
村上春樹の小説という『子供』は、凡百の人間の子供よりもはるかに立派な「遺伝子の船」なのではないかと思うのですけど、そういう僕の考えは、世の中の「共通認識」とは程遠いようです。
僕はこの鴨志田さんの【「子供に渡すことなく自分の代で、アルコール依存症のスパイラルを絶つことができた」】という言葉に対して、「でも、子供たちは、将来アルコール依存症になってしまうかも……」などと、揚げ足をとってみたくなるのですが、そんなことはたぶん、鴨志田さん本人も百も承知なはず。アルコール依存っていうのは、そんなに簡単な病気じゃないので。たぶん、この鴨志田さんの言葉は「確信」というよりは、「祈り」みたいなものだったのでしょうね。
それでも、「負のスパイラルを絶つ」という自分の「役割」を果たした鴨志田さんは、やっぱり、幸せに死ぬことができたのかもしれないな、とも感じるのです。
僕にも、そんな心境になれる日が、いつか来るのでしょうか?
100万回生きても、わからないような気もするんだよなあ……
08月16日(木)
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