ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「ケツ割るんやない。生きていくんや」
 そんななかで、食べていくために「いかにインパクトのある斬られ方をするか?」を追求していた結果誕生したのが、いまの「日本一の斬られ役」福本清三なんですよね。そもそも、いまや有名人の福本さんなのですが、そのもう還暦を過ぎた福本さんのキャリアのほとんどは、「誰にも顧みられることのないその他大勢のうちのひとり」でしかなかったのですから、ここまで「斬られ役」を続けてこられたことそのものが「偉業」なのかもしれません。大スターならともかく、ギャラも安ければ誰も注目してくれない仕事なのに。
 まあ、ここに書かれているような「家族の理解」というのは、非常に大きかったのでしょうけど。

 そんな福本さんの言葉だからこそ、この「ケツ割るんやない。生きていくんや。新しい仕事で立派に生きていくことは決して恥ずかしいことやない」という言葉には、すごく「伝わってくるもの」があるように僕には感じられます。人は「夢を追うこと」を賞賛し、「夢をあきらめるなんて、情けない……」と蔑みがちなものなのですが、他人に過剰な苦労や負担をかけてまで「夢を追う」人生が、必ずしも「正しい」わけではないんですよね。むしろ、そういう人生のほうが「ケツを割っている」のかもしれません。

 「生きていくため」「食べていくため」に大部屋俳優となり、「斬られる技術」を磨き、予想外の人生を送ることになった「日本一の斬られ役」のこの言葉、多くの「夢をあきらめざるをえなかった人たち」にとって、すごく勇気を与えるものではないでしょうか。

 つまらない人生のように思えても、「生きていく」っていうのは、それだけでけっこうすごいことなのですよ、きっと。

08月10日(金)
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