ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■タミヤの「代理店選びの鉄則」
「明日の午後の便で二品に帰るので明朝10時ごろホテルに来てほしい」
と伝えた。
翌朝、ロベールは妻のエリカと正装してやってきた。条件を提示するなかで、
「小さくてよいから、パリにも事務所と倉庫をもちなさい」
といい添えた。ホビーショップは圧倒的にパリに集中しているからである。
条件交渉はスムースに進んだ。最後にロベールがタミヤの代理店になった時のマークを3種類、提案してくれた。すべて綺麗に彩色されている。彼は昨夜一睡もしないでこの新しいマークの図案を考えてくれたのである。
3種類のなかから「T2M」というマークを選んだ。
ビジネスはとてもうまくいき、数年で事務所や倉庫は新しい土地に移された。いまやフランス有数のホビーグッズのインポーターである。】
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結果的には、タミヤにとって、このアンリ・ロベール氏との出会いは「お互いにとって素晴らしい幸運をもたらした」のですが、この「タミヤの代理店選びの鉄則」というのは、僕にとっては非常に興味深いものでした。
この田宮社長が書かれたものを読んでみると、僕だったらグラウプナー・モデリシモという会社は絶対に選ばないだろうなあ、と思うのです。
知名度は低いし、田舎にあるし、倉庫には商品が少なく、社長であるロベールは熱意はありそうだけれども、あまり商売上手という感じではありません。どうみても、「有望な会社」には見えませんよね。
僕がタミヤの社長としてパートナー選びをするのであれば、もっと知名度が高くて棚は商品であふれ、活気がありそうな会社にするだろうと思うのです。タミヤの代理店に立候補してきた会社は、他にもあと6社もあったのですから。
でも、田宮俊作社長は、普通の人がネガティブなイメージを持つであろう「棚が空いていること」を「ここにタミヤの商品を入れられる」と考え、「商売があまりうまくいっていないからこそ、タミヤの商品を必死で売ってくれるはずだ」と予想したのです。もちろん、アンリ・ロベールという人間になんらかの魅力を感じたのも事実でしょうし(僕がこの文章を読んだ限りでは、単なるお調子者なんじゃないかという印象だったのですが)、連れていってもらったフランス料理の店が人生のベスト3に入るくらい美味しかったというような「後押し」もあったのかもしれません。とはいえ、普通の人であれば、やっぱりもっと「無難な選択」をするのではないかなあ、と僕は思うのです。いちばん大きくて安定している会社を選んでおけば、万が一失敗してもみんな「納得」してくれるでしょうし。
こんな話があります。
ある有名な靴のメーカーが、アフリカの原住民の村に販売担当者を派遣しました。
一人目の担当者は、本社にこう報告したそうです。
「この村では、誰も靴なんか履いちゃいない。こんなところで商売ができるわけがないよ」
しかしながら、二人目の担当者は、興奮しながら、こんな報告をしたのです。
「大変だ!この村には、まだ靴を履いていない人がこんなにたくさんいる。これはビジネスチャンスだ。すぐサンプルを送ってくれ!」
「パイオニア」と呼ばれる人の考え方というのは、「マイナスに見える条件をプラスに変えてしまう」ものみたいです。
そして、この選択には、「どん底から抜け出そうと必死になっている人間への共感と応援」もあったのではないかと思います。
田宮社長は、ロベール氏に、無名の模型会社から「世界のタミヤ」を築き上げてきた自分の姿を重ねていたのかもしれませんね。
06月10日(日)
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