ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■黒田博樹「スーパースターになるならカープで」
【大村は子供の頃、プロ野球を観にいったことが「1回しかなかった」。彼にとって野球は、観るものではなく、やるものだったからだ。野球をやっていたから野球を観る時間はなく、どこかのチームのファンでもなく、誰々のファンでもなく、「サインして欲しいと思ったこともなかった」。だからプロになってからも、実はファン心理というものが「分からなかった」。
プロには大村のようなタイプが結構多い。そんなタイプにとって、あの騒動(近鉄とオリックスの合併劇)は「ファンを意識するキッカケになった」。そして、プロ野球興行はファンに支えられて成立してるという当たり前の構造を意識するようになり、問題意識を持つようになった。】
おそらく、多くのプロ野球選手にとっての「実感」は、こんなものだったのだと思います。とくに、高校時代から甲子園のスター選手だったり、スカウトにもてはやされていた選手たちは。「プロ野球に入れるような選手たちだからこそ」、野球というのは「自分でやるもの」で、「見るもの」ではないという感覚なのでしょう。こういうのは、日頃身近に接しているはずなのに「医者には患者の気持ちがわからない」と言われるのと、同じようなものなのかもしれません。少なくとも、観客が「同じ野球を愛するものとして、このくらいはわかるはず」という「ファンの気持ち」は、多くのプロ野球選手にとっては「考えてみたことがないもの」だったのです。
黒田投手は、上宮高校時代「投手としても3番手」だったそうです。いくら甲子園常連の名門校とはいえ、高校時代は「スター」として騒がれる存在ではなかったはずです。そんな自分の経験と、子供時代に見た「少ない観客のために頑張ってくれているように見えた選手」の姿が、今回の黒田選手の選択に大きな影響を与えたことは間違いないでしょう。もちろん、「だからこそ自分がより目立ちたい、観客の多いところでプレーしたい」と考える選手だっているとは思うのですが、黒田投手は、そういう人ではなかったみたいです。
「どちらが正しいか野球人生が終わってみるまで分からない」と黒田投手は語っています。たぶん今でも、「やっぱりメジャーや人気チームに移籍しておけばよかったかな…」と後悔するときだってあるのではないでしょうか。
「自分の夢」としてメジャーに挑戦したり「現実的な選択」として国内人気球団にFA移籍する選手が多いなか、「弱くてお金も人気もないチームに留まって頑張る」という「夢」を描いてくれた黒田博樹の「選択」を正しいものにするためには、今後もよりいっそうのカープファン、野球ファンの後押しが必要です。
僕にとっては、松坂や井川がマスコミの報道合戦のなかメジャーの強豪チームで挙げる「1勝」よりも、黒田がカープで勝ち取った「1勝」のほうがはるかに重く、意味があるもののように思えるのです。たとえ、大部分の野球ファンにとっては、スポーツ新聞の片隅に小さく結果だけが載っている「ささいなこと」でしかないのだとしても。
05月06日(日)
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