ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■瀬戸内寂聴さんのところで出家しようとした映画監督
 松岡監督は1961年生まれで、ここで名前が挙がっている『バタアシ金魚』は、1990年の作品です。主演は筒井道隆さんと高岡早紀さん。30歳前の監督デビューというのは、確かに「若い」ですよね。デビュー作の成功で、いきなりスポットライトを浴びてしまったのは、当時の松岡監督にとっては、ものすごく意外であったようです。「映画監督」なんて、「なろうと思って努力すれば誰でもなれる」というような仕事じゃなさそうですし。

 実際は、「もう出家するしかない……」というくらいまで精神的に追い詰められていた松岡監督が(考えてみれば、なぜそこで「引退」「転職」や「自殺」ではなく、「出家」という発想になったのかは疑問ではあります)、瀬戸内寂聴さんの「寂庵」に向かってみると、道中で既に「在家」にしとこうかな……という気分になってきて、寂庵に着いて他の人の深刻な悩みを耳にしているうちに「在家も無理かな……」と考え始めます。そして、いざ寂聴さんに会って、さんざん自分の「弱さ」を語ったら、帰ってきた言葉は「きわめて正常」。松岡さんの悩みが極度に深刻なものではなかったというもあったのでしょうが、「他人の話を聞く」、そして「自分の話、悩みを聞いてもらう」ということそのものにも、ある種の「治療効果」があったのでしょうね。いや、この話、他人事として読むと、確かに「きわめて正常」な人生における袋小路の話なのですけど、僕も同じようなことで悩んで、「誰にも僕の気持ちなんてわからないんだ……」なんて落ち込んでいたりもするわけです。それが、ごく普通の人間というもので、「きわめて正常」なのでしょう。

 それにしても、瀬戸内寂聴さんは、いろんな意味で「商売上手」だなあ、という気がします。細木和子さんにしてもそうなんですけど、結局多くの人は、誰か頼れる人に「おまえは正常」「あなたは大丈夫」って言ってもらいたいのだよなあ。

04月05日(木)
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